2009 Fiscal Year Annual Research Report
中国の民族理論と民族間関係の動態―文化人類学的視点からの検証
Project/Area Number |
19401037
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
瀬川 昌久 Tohoku University, 東北アジア研究センター, 教授 (00187832)
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Keywords | 中国 / 少数民族 / エスニシティー / 民族理論 / 費孝通 / 中華民族 / 同化 / 自己イメージ |
Research Abstract |
最終年度である平成21年度は、主として成果とりまとめのための研究集会と連携研究者による海外補充調査を実施した。その概要は下記の通り: 2009/05/16 打ち合わせ会合(会場:東北大学東京分室) 2009/09/07-09/16 曽・海外調査(貴州省安順市・貴陽市等) 2009/11/02-11/08 塚田・海外調査(広西壮族自治区寧明県・靖西県等) 2009/12/17 打ち合わせ会合(会場:東北大学東北アジア研究センター) 2010/02/11-02/21 長谷川・海外調査(雲南省西双版納等) 2010/01/02-01/04 松岡・海外調査(四川省〓川県) また、費孝通の「中華民族多元一体構造論」について分析を行い、その民族認識の主要な特色を整理した。そして、これまでの海外調査や資料の分析検討をもとに、研究代表者ならびに研究分担者による研究成果報告論文集を完成させた。そこから得られる結論は以下の通り。 費孝通の「中華民族多元一体構造論」の民族認識は、少なくとも今回の研究課題が直接の考察範囲とした中国南部の歴史的な民族動態を考える限り、個々の地域社会内部で展開されてきた具体的な過程をうまく説明し得る側面をもっており、その意味で充分な学術的な価値を有していることが確認される。他方、同時にそれが学術的見解の域を脱して政治的意図に結びついた拡大解釈をほどこされやすい側面もまた確認される。「多元一体構造」の持続性に関しては、費孝通が予測するように文化的・民族的多様性に対する価値付与が引き続きなされ得るのか、あるいはすべて一元化へ向かう「途上」に過ぎないのか、より長期的な視野での検討が必要である。 同理論の学術的価値について、中国の民族政策の現場において人類学的手法で検証したものはこれまで存在せず、その意味でこれは画期的な研究成果である。
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Research Products
(14 results)