Research Abstract |
平成19年度には,中央アジア南部テンシャン山脈北面(西よりTw,Te地域)および北部アルタイ山脈南面(西よりAw,Am,Ae地域)の山腹〜山麓において,広域土壌調査を行った。テンシャン山脈ではTw,Te地域共に,1,400m以下でCalcisols(CL),それより上部ではKastanozems(KS)の分布が見られた。さらにTw地域では,標高に従いChernozems(CH),Phaeozems(PH),Umbrisols(UM)へと規則的な遷移が見られたのに対し,Te地域ではCH,PHを欠き,高標高帯でKSから直接Cambisols(CM)へと遷移した。またTw地域では標高に従い土壌pHが低下するのに対し,Te地域土壌では高標高帯におけるpHの顕著な低下は見られなかった。一方アルタイ山脈南面では,Aw地域において低標高地よりKS,CHが分布したのに対し,AmおよびAe地域では,乾燥帯から草地帯への移行がそれぞれ500m,1,100m付近で見られ,より東方で草地帯の下限が上昇する傾向を示した。Aw地域では,500〜1,500mの森林帯にLuvisols(LV)が出現し,より高標高帯にUM,CMが分布した。一方Am,Ae地域ではLVの分布を欠き,KSの後CH,PHを経て,1,600〜1,800m以高では主として酸性のCMが分布した。またAw地域では500m以高で土壌pHが一貫して6以下の酸性であったのに対し,Am,Ae地域では山麓草地帯でpHが8近辺を示した後標高に従い低下するが,その程度はより高標高帯まで乾燥が厳しいAe地域で急であった。以上より,中央アジア山麓・山間地では,西側でより湿潤であり,東方へ向けて乾燥するといえる。乾燥の影響は,テンシャン山脈北面では主として中〜高標高帯に,アルタイ山脈南面では低標高帯に現れる。またこのような気候条件の違いに対応して,異なる土壌の垂直成帯性が観察された。
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