Research Abstract |
本研究では,中央ユーラシアにおける過去の生産生態環境の復元を目指している。平成20年度には、現在の気候と土壌分布の関係を広域的に把握するために,各種土壌の分布を規定する気候条件の特定をめざした。 調査地は,テンシャン山脈北面およびアルタイ山脈南西面の山麓〜山間地であり,カザフスタン共和国から中華人民共和国へと東西にまたがる地域である。山麓乾燥地帯から亜高山帯にわたって計154地点において土壌調査を行った。また調査地域周辺の気象ステーションにおける長期観測データを収集した。 テンシャン・アルタイ両山域における土壌・植生分布は以下のようにまとめられる。いずれの地域においても土壌・植生分布の垂直成帯性が見られ,景観が低標高側より草原,森林,高地草原と推移するとともに,土壌はCalcisols(CL), Kastanozems(KS),[しばしばChernozems (CH)], Phaeozems(PH),[西方でLuvisols(LV)], Umbrisols,[アルタイではCambisols (CM)]と遷移した。両山脈とも西方に比べ,東方では特に低標高地帯で乾燥する傾向が見られた。各地域とも標高とともに土壌pHの低下が見られた。 このような各土壌が生成する気候条件を推定するために,収集した気象データのうち年平均気温(AT)と年降水量(PPT)について,位置情報,土壌情報などの二次データを用いて段階的重回帰分析を行い,以下の推定式を求めた。 AT=51.2-0.901(Latitude [degree])-0.00574(elevation[m]) (n=77, r2=0.86**) PPT=2670-28.6(Latitude[degree])-125(Soil pH) (n=17, r2=0.70**) 今後過去の気候変遷データとこれらの式を組み合わせることによって、GIS上で過去の生産生態環境を地図化することを試みる。
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