Research Abstract |
本研究では,中央ユーラシアにおける過去の生産生態環境の復元を目指した現地調査およびデータ解析を行っている。平成21年度には,主として以下の調査を行った。 1)調査地をジュンガル・アラタウに拡大し広域土壌調査を行った。前年度のトランスイリ・アラタウ山域(アルマティ市周辺)における調査結果と併せて,これらの山地に囲まれたイリ盆地が,おそらく局地的なフェーン現象によるものであろうが,例外的に乾燥していることが明らかとなった。このような局地的な気候をどのように解析してゆくか,今後の課題である。 2)異なる気候条件下における生態系の有機物動態を評価するための指標として,安定同位体標識法による植物残渣分解速度の実測を,テンシャン山脈北面およびアルタイ山脈南西面の山麓~山間地において開始した。 3)これまで広域より採取した土壌の化学分析を進め,土壌有機物蓄積量,炭酸塩残存量,土壌酸性度など土壌特性値と,位置情報,推定気候条件との関係を検討した。 4)各地において主要な土壌有機物蓄積形態である有機金属複合体が,主として土壌酸性度,ひいては気候条件(湿潤度)に応じて大きく現存量を変化させることが明らかとなった。 今後植物残渣分解速度の実測および一次生産量・土壌有機物投入量の調査(平成22年夏に実施予定)の結果を待って,GISを用いてこれらを地図化するとともに,当該地域の過去の気候変動に伴う生産生態環境の経時的変化を解析した上で,研究成果報告書を取りまとめる予定である。
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