2008 Fiscal Year Annual Research Report
エイズ脳症とプリオン病の進行を調節する脳内分子シャペロン14-3-3の役割解析
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19500308
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
矢野 仁康 The University of Tokushima, 疾患酵素学研究センター, 准教授 (40304555)
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Keywords | エイズ脳症 / 14-3-3蛋白質 / ストレス蛋白質 / 神経細胞死 / HIV-1, gp120 |
Research Abstract |
<エイズ脳症における脳内ストレス蛋白質、14-3-3の役割解析> HIV感染による中枢神経障害は、ウイルス自身か、ウイルスに感染したマクロファージ等の炎症性細胞が、血液脳関門(BBB)を介して脳内に侵入し、これによって引き起こされる神経細胞死がその主な原因と考えられているが、その詳細なメカニズムは分かっていない。これまでに、我々は、エイズ脳症発症に重要なこの2つのプロセスでの14-3-3蛋白質の役割解析を行う事でそのメカニズムの一部を明らかにしてきた。具体的には、1)HIV-1膜糖蛋白gp120によって神経細胞死が誘導される際、14-3-3蛋白質が発現増強しBadのミトコンドリア移行を阻害する事で、細胞死を抑制している事、2)gp120による、血液脳関門を構成する脳微小血管内皮細胞間のタイトジャンクション構築障害の際にも、14-3-3蛋白質が発現増強しZO-1,ZO-2のプロテアソームによる分解を阻害する事で、タイトジャンクションの崩壊を抑制している事の発見である。今年度の研究では、上記メカニズム、特にgp120による神経細胞死についてさらなる詳細な解析を行った。その結果、gp120はBadのセリン112番と136番目の脱リン酸化を引き起こすが、これは、gp120による各々のセリン残基のリン酸化キナーゼ(136番目は,PI3K,Akt,112番目は、Raf-1,ERK,P90RSK)の不活性化によるものであり、14-3-3蛋白質の役割はこれらキナーゼに直接的、もしくは間接的に作用する事でこれらキナーゼの活性を維持し、gp120による神経細胞死に抑制的に働いている事を新たに見出した。今回得られた、gp120による神経細胞死誘導の詳細は、今後エイズ脳症発症機序解明の重要な手掛かりとなる事が期待される。
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