Research Abstract |
本研究の究極的な目的は, 算数・数学学習における比例的推論の役割を教授・学習の両側面から分析し, 比例関係を中心概念にすえ, かつその適時性に配慮した小, 中, 高等学校段階での一貫カリキュラムを構築するとともに, それを実証的に行うことにある。特に本研究では, 小学校の実践経験のある数学教育研究者を募り, 数学者とともに小学校算数の比例的推論の教授・学習過程の実証的研究を行うことを目的としている。そして, 教授実験の結果を詳細に分析することによって, 比例概念の形成の立場からみて, 指導内容の適時性を再評価し, カリキュラムに反映させることを意図している。 今年度は, 以下の二つの研究課題を設定して取り組んだ。 1つは, 昨年度行った1あたり量を示さない整数の比例的推論の実践授業(小学校4学年)を分析することである。分析の結果, 以下のことが明らかとなった。1あたり量を示さない題は, 乗法と除法を一回ずつ用いる二段階問題のため, 乗法と除法を用いる際の根拠を問われる必然性がある。と同時に, この問いに答えることが, 暗黙のうちに用いていた比例関係を顕在化することになる。この演算決定のプロセスを数直線図に表すことで比例関係を顕在化しようとした。実践の結果, 授業後の学習感想からは数直線図ならびに比例関係を顕在化したよさに触れたもの力弐多く見いだされた。しかし一方で, 評価問題では数直線図に触れることなく比例関係を前提に考えている実態も明らかとなった。なお, これに付随した形で小学校3学年の授業実践の分析を行い, これらも含めて3本の査読付き論文としてまとめた。 もう1つが小学校5学年で比例関係を顕在化させる意図をカリキュラム構成の観点から分析した。1つが小数の乗除法の単元であり, もう1つが割合の導入場面である。これらの授業実践については, 現在詳細に分析している途中であり, 分析した結果を, 来年度には発表する予定である。
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