2009 Fiscal Year Annual Research Report
第二次大戦下の日本人軍属と欧米女性-トランスナショナル・ヒストリーをめざして
Project/Area Number |
19510269
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
有賀 夏紀 Saitama University, 教養学部, 教授 (20114358)
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Keywords | ジェンダー / 国際結婚 / トランスナショナル / 第二次世界大戦 / 人種 / インドネシア / オランダ / 歴史叙述 |
Research Abstract |
本研究の目的は、第一は、第二次世界大戦下の日本人軍人・軍属と日本軍占領地域における欧米女性の関係を、ジェンダー、人種、国際関係など多角的な視点から追究し、その実態を明らかにすること、第二は、戦争とジェンダー・セクシュアリティの関係についての理論的枠組をつくること、第三は、他国間、他人種間のジェンダー・性関係を実証的理論的に研究することを通じて、多文化主義、トランスナショナルな視点から歴史を構築することにあるが、具体的には、ひとりのヨーロッパ女性のライフ・ヒストリーを通しての検証を試みようとしている。そのために、その女性、およびその周辺の人々の聞き取り調査を精力的に行ってきたが、今年度は論文(あるいは著書)の執筆にめざして、聞き取り調査の補足、ライフ・ヒストリー/ライフ・ストーリーについての方法論的研究、二次資料によるその時代を理解することに努めた。聞き取り調査は膨大な量になっており、テープ起こしされたトランスクリプトの整理を行っているが未だ終了していない。また、インドネシアでの現地調査を予定していたが、諸般の事情で今年度は実現できなかった。また、ライフ・ヒストリー/ライフ/ストーリーを歴史として組み立てる際に、個人の感情を要素として因果関係を説明するという方法論的課題を前年度から引き続き追究してきた。 残念ながら、補助金受領期間中に研究成果を論文あるいは著書として出版することはできなかったが、課題があまりに大きかったととが主な理由である。今後、学術的論文の他、物語としての著書をまとめ、これらによって、ジェンダー史、国際関係史、社会史、トランスナショナル・ヒストリー、グローカルヒストリー、日本史、社会思想史に、人間の個人的な感情を含み混んだ、新しい歴史の叙述を示したいと考えている。
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