2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19520029
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
菅野 孝彦 Tokai University, 総合教育センター, 教授 (50221908)
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Keywords | ルサンチマン / 怨霊信仰 / 恨の思想 / 報怨以徳の思想 |
Research Abstract |
本研究課題の第二年度においては、ルサンチマン概念の確定に関連しては「フォイエルバッハからボルノーへ」の論攷を著した。フリードリッヒ・ニーチェやマックス・シェーラーといったルサンチマン概念の主要な思想家だけでなく、広範な哲学者・思想家群に目を向け、ルサンチマン概念のさらなる理解を深めた。また、東アジア各地域の思想・文化におけるルサンチマン研究の第一年度重点対象地域であった日本に関するルサンチマン概念の研究に関しては、神仏習合の第三段階となる神道の穢れを忌避する観念の発達と阿弥陀信仰の合体期以降の研究の研究を進めた。そこでは、それまでの護国的色彩の濃い仏教から離れ、来世を重視し個人の救済をはかろうとする『往生要集』にみられるような、現世では完全に穢れを取り除くことは不可能であり、それゆえ浄土を求めようとする思想の成立をみることができた。さらに、神仏習合の第四段階といえる仏が「本」となり、日本の神々が「地」となる本地垂迹説の形成を考究した。なお、第一・第二年度における研究の一里塚として、「東アジア地域の思想・文化におけるルサンチマン研究」を上梓し、とくに平安時代までの「怨霊信仰」を中心に論じた。それによって、第一年度の成果をふまえるとともに、その研究遂行過程において抜け落ちた箇所にも目を向けることができたと思われる。研究対象領域である日本、中国、朝鮮半島の三地域から研究重点地域を、新たに朝鮮半島にも視野を広げ研究の推進をはかることが平成20年度の課題であったが、「恨の思想と韓民族の経済」と題し口頭発表を行った。多様な現れをもっ「恨の思想」の社会構造領域的現れの一端を分析したといえよう。
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Research Products
(3 results)