2008 Fiscal Year Annual Research Report
〈暴力〉の社会思想史的研究--ゲヴァルト/ヴァイオレンスの二分法を超えて
Project/Area Number |
19520077
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
上野 成利 Kobe University, 国際文化学研究科, 准教授 (10252511)
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Keywords | 暴力 / ミメーシス / 批判理論 / 社会哲学 |
Research Abstract |
本研究の目的は、ゲヴァルト(主体の支配・統御に関わる暴力)とヴァイオレンス(主体の統御を超えてほとばしる暴力)という〈暴力〉の二つの側面に着目し、この両者がどのように絡み合つているのかを解明することである。昨年度は主にゲヴァルトを軸とした暴力論、とりわけC・シュミットとG・アガンベンの「主権」概念の検討に重点を置いた。今年度はこれをふまえて、「主権」論を真っ向から批判するA・ネグリ/M・ハートの議論に着口し、「主権」にはらまれる問題点についてさらなる検討を加えた。 ネグリらの議論によれば、近代の主権パラダイムでは市民・国民という政治的主体が自明視されてきたが、その根底にはじつのところ雑多な人間の群れ(マルチチュード)が横たわっている。そしてグローバル化が加速して主権国家の枠組みが揺らぐとともに、このマルチチュードの存在が前景化するようになるという。ところがネグリらは一方で、今度は新たに「グローバルな主権」としての「帝国」が成立するとし、あれだけ批判していた「主権」概念をみずから引き受けてしまう。ここにはある種の埋論的な混乱が認められるが、しかしここで重要なのは、グローバル化と「主権」概念とは互いに矛盾するわけではないという点である。むしろ「主権」はそれほどまでに深くわれわれの社会理解に根を下ろしているということ、その意味では「主権」概念を支える主体の情動的な契機などをあらためて検討の俎上に載せる必要があるということ、これがここから引き出すべき論点だといえる。 こうした作業をふまえて次年度では、ホルクハイマー、アドルノ、ベンヤミンらの「ミメーシス」論の検討に重点を置く。「主権」を強固に支える情動的な契機もこの「ミメーシス」論の文脈で一定程度解明されるにちがいない。これが次年度に向けて立てている本研究の見通しである。
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Research Products
(1 results)