2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19520086
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
北村 清彦 Hokkaido University, 大学院・文学研究科, 教授 (70177864)
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Keywords | 美学 / ヨネ・ノグチ / 文化的二重国籍性 / イサム・ノグチ |
Research Abstract |
ヨネ・ノグチの美学を検討するために、今年度はまず研究の枠組みを構築することに務めた。すなわち、英語で詩を書いた「ヨネ・ノグチ」と日本語で評論を書いた「野口米次郎」とを区別し、彼の美的思想を「文化的二重国籍性」の概念のもとに明らかにした。そして彼の中にあったこの葛藤が葛藤として意識されている限り、彼の思想は国際的でありえたが、その葛藤を解消したとき、彼は極端な国粋主義に陥ってしまい、結果として厳しい戦争責任が問われることになったのである。またこのような「文化的二重国籍性」はひとりヨネ・ノグチのみの問題ではなく、今日われわれの置かれている状況を鑑みたとき、われわれ自身の美意識のあり方と深く関係していることも明らかになった。 この間の研究成果の一端は、第17回国際美学会議(2007.7、中東部工科大学、アンカラ、トルコ共和国)において発表された。また第58回美学会全国大会(2007.10、北海道大学)ではアイヌ芸術に関するシンポジウムを開催し、近代化にさらされたなかでのアイヌ民族の芸術の「文化的二重性」について議論されたことも本研究の展開のひとつである。 また本研究成果は「ヨネ・ノグチから野口米次郎へ-「文化的二重国籍性」の破綻としての「国家主義」-」としてまとめられ、「〈醜〉と〈排除〉の感性論-否定美の力学に関する基盤研究-」(科学研究費補助金・基盤研究(A)代表・京都大学文学研究科教授・宇佐見文理)の研究成果報告書に掲載予定である。
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Research Products
(1 results)