2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19520086
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
北村 清彦 Hokkaido University, 大学院・文学研究科, 教授 (70177864)
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Keywords | ヨネ・ノグチ / イサム・ノグチ / 牧野義雄 / 文化的二重国籍性 / 美学 |
Research Abstract |
本研究はヨネ・ノグチに対する評価の変遷を欧米と日本との比較のもとに考察することが目的であるが、日本においては近年、再評価の機運が著しい。その理由は没後六十年という区切りに負うところが大きいが、同時に息子のイサム・ノグチの評価と連動している。今年度の研究の成果は、ヨネが実は第二次大戦中も、また戦後もイサムと連絡を取り合っていたことがイサムの証言から明らかになったことである。そこからヨネの戦時中の急進的な国家主義は、息子がアメリカ人であるという事実に対するある種の偽装ではなかったかと推測することもできる。すなわち、ヨネがアメリカと通じているという疑惑に対する防御姿勢としての国家への忠誠の表明である。もちろんヨネにそのような意識はなかった。だが従来、戦時中の言動に対して何の釈明も行わずに死亡したといわれてきたが、イサムの証言によればヨネは自己批判の手紙をイサムに書いており、戦時中のヨネの思想のリアリティが再検討されなければならない。また今年度はヨネとほぼ同世代で、同じようにサンフランシスコに渡り、ロンドンで成功をおさめ画家・牧野義雄とヨネとの関係も調査した。その結果、二人とも同じような精神状況にあったものの、牧野はアメリカにおいて正式の教育を受けたこと、また第2次大戦という物理的事情から帰国せざるをえなかったこと,また画家と詩人という芸術的表現の違いなどから両者には微妙な立場の相違があることも明らかになった。とはいえ、両者とも異国での経験がその思想の方向を決定していることとは間違いなく、そのような思想形成のあり方「文化的二重国籍性」として把握する可能性を今後展開してこととする。
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Research Products
(4 results)