2007 Fiscal Year Annual Research Report
ルノルマン・ド・トゥルヌエムの美術アカデミー改革と18世紀フランス美術
Project/Area Number |
19520122
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Research Institution | Aoyama Gakuin Women's Junior College |
Principal Investigator |
大野 芳材 Aoyama Gakuin Women's Junior College, 芸術学科, 教授 (50213822)
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Keywords | 美術アカデミー / ルノルマン / ラ・フォン / サロン |
Research Abstract |
ルノルマン・ド・トゥルヌエムが王室建造物局総監として、美術行政の中心的存在となったのは1745年暮れである。彼が美術界にもたらした改革を理解するために、18世紀前半の「美術アカデミー議事録」と、1737年から定期的に開催されるようになったサロンの出品作品の調査を行った。パリの国立図書館での調査や、国立西洋美術館資料室などに収蔵される図書やマイクロフィルム化された18世紀の文書の調査・収集からは、ロココ美術の名でくくられる、経済の繁栄を背景にした現世を肯定する享楽的な美術作品の制作実態が明らかになった。ルイ14世の治世期にフランス美術をヨーロッパで一躍輝かしい存在にした、いわゆるフランス古典主義の伝統は、表現手法と主題選択の両面で、大きく後退してしまったのである。それはまた、サロンの開催から生まれたともいえる美術批評が取上げ批判した問題でもあった。これらのことからルノルマンの改革が古典主義の伝統の復活を目的にしていたことが、あらためて瞭然となった。ところでルノルマンが就任して最初のサロンは1746年8月末から開催されたが、彼が本格的に改革に着手するのは、それを契機にしているように思われる。そのために1746年のサロン出品作品のリスト作りを始めたが、それらの現在の所在がなかなか判明せずに、調査を継続中である。ルノルマンの改革は、美術館の設立というひとつの重要な結論を導くことになるわけだが、それらの問題を「公衆」という、新たな鑑賞者の存在とともに考察することが今後の課題である。それは過去の問題ではなく、今日の美術館や美術の制度を見直すうえで極めて重要であると思われる。
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Research Products
(3 results)