2007 Fiscal Year Annual Research Report
国宝「初音の調度」の総合的研究-技法・意匠を中心に-
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19520123
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Research Institution | The Tokugawa Reimeikai Foundation |
Principal Investigator |
小池 富雄 The Tokugawa Reimeikai Foundation, 徳川美術館, 学芸員 (40195631)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
徳川 義崇 財団法人徳川黎明会, 徳川美術館, 会長館長 (50390745)
四辻 秀紀 財団法人徳川黎明会, 学芸員 (30201073)
吉川 美穂 財団法人徳川黎明会, 学芸員 (70260106)
龍澤 彩 財団法人徳川黎明会, 学芸員 (00342676)
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Keywords | 哲学 / 美学・美術史 / 美術史 / 漆工史 / 蒔絵 / 大名婚礼調度 / 幸阿弥派 / 初音 |
Research Abstract |
徳川美術館が所蔵する「国宝・初音の調度」を対象とした本研究では、予定通り今年度六月と二月の二回、のべ四日間にわたり研究会を開催して、熟覧調査をした。博物館学芸員だけでなく漆工芸家の室瀬和美氏、重要無形文化財保持者(人間国宝)北村昭斉氏らの技術スタッフも研究協力者に迎えて、撮影、熟覧、討議を重ねた。全体が75件の内、今年度に調査を終えたのは、15点であった。 『源氏物語』「初音」の意匠を、文学のどの部分を、どのように意匠化したのか、文学としてどのような理解、解釈をしたのか、文様配置の面からの研究として議論が重ねられた。一部の調度にある銀の丸は物語には無い「新月」、「金星」など両用の解釈がされ未解決である。金銀であらわされた鴬も、明石の母子になぞらえるとの解釈や、他の細部の図像も議論が重ねられた。 技術的には、目視から製作の過程が、ある程度判断出来た。高蒔絵の基本的な技法は「地の粉盛り上げ」と呼ぶ材料技法が共通する旨、わずかな傷口や欠けた部分から判断できた。漆と特殊な土を練り合わせてペースト状にして図柄を盛り上げて、油絵のような立体的な高蒔絵を実現している。「京地の粉」と呼ばれる京都山科産の土で、現在日本の主流の輪島産とは色、質が違う。平成十三年度文化財修復補助事業として初音蒔絵貝桶と同蒔絵帯箱の修復が行われた。修復の経過や結果の報告書は既に刊行されてはいる。このデータにもとづき、地蒔きである梨子地粉の製作を着手した。わずかに二点の修復に際しての分析に過ぎず、九州国立博物館の更に深い科学的分析の協力体制が今年度確認できたので、翌年度以降の調査予定とした。
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