2008 Fiscal Year Annual Research Report
国宝「初音の調度」の総合的研究-技法・意匠を中心に-
Project/Area Number |
19520123
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Research Institution | The Tokugawa Reimeikai Foundation |
Principal Investigator |
小池 富雄 The Tokugawa Reimeikai Foundation, 徳川美術館, 学芸員 (40195631)
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Keywords | 哲学 / 美学・美術史 / 美術史 / 漆工史 / 蒔絵 / 大名婚礼調度 / 幸阿弥派 / 初音 |
Research Abstract |
予定通り、6月と2月に2回、延べ4日間の研究会を開催した。研究会では「国宝・初音の調度」の熟覧調査と二名の口頭発表が行われた。研究協力者である博物館漆工関係者、重要無形文化財保持者(人間国宝)の二名の技術者、北村昭斉、室瀬和美両氏と工房職員を加えて、意匠・技術など多方面から熟覧調査して、議論した。今年度調査が済んだのは、全体75件のうち20点であった、4年間の全体計画からすると初年度から2年目の今年で半分以上が完了しておらず、このままでは計画通りの75点の悉皆、熟覧を完了することが難しいと判断されるまでの段階に来た。今後の進行計画の修正は来年度に検討する。口頭発表・報告は森戸敦子氏「胡蝶蒔絵のイコノグラフィー」、川畑憲子氏「国宝初音の調度文台・硯箱、祝い枕の科学調査」の2本が行われた。 今回の研究を踏まえて九州国立博物館に、文台・硯箱(1具)と祝いの枕(1対)が徳川美術館から貸し出しされ、平成21年1月1日から2月1日まで一般に特別公開された。九州初公開であった。この展示にあわせて九州国立博物館の保存修復室の協力を得て、蛍光X線反射分析による蒔絵金属粉の成分分析、X線CTスキャナー画像分析による木地構造の分析、高精細デジタル撮影による画像の分析など非破壊による最新の科学分析ができた。古美術品を対照としたCT撮影設備は、日本唯一であり、旧来の知識を大きく塗り替える多くの新知見が得られた。たとえば祝いの枕の木地構造があきらかとなった。枕の赤い塗装部分が、硫化水銀の「朱」ではなく、酸化鉛の「鉛丹」と判明した。これらは速報として2月の第4回研究会に川畑憲子氏から発表された。詳細は、本年7月の日本文化財科学会第26回大会(会場名古屋大学)での発表を予定している。発表予定者(鳥越俊行・川畑憲子・今津節生・小池富雄)。
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