2009 Fiscal Year Annual Research Report
国宝「初音の調度」の総合的研究-技法・意匠を中心に-
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19520123
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Research Institution | The Tokugawa Reimeikai Foundation |
Principal Investigator |
小池 富雄 The Tokugawa Reimeikai Foundation, 徳川美術館, 学芸員 (40195631)
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Keywords | 初音の調度 / 宝石サンゴ / 蒔絵 / CT分析 / 文化財保存 / 文化財資源 |
Research Abstract |
今年度も1泊2日の研究会を2回開催した。徳川美術館に集まって国宝・初音の調度および関連作品を熟覧・調査した。その都度新しい技法的な発見や観察があり、全点75点の初音の調度のうちでも、1回目2回目の熟覧調査が済んだ作品であっても、さらに遡って見直す要望が参加者から多かった。したがって75点全点のうち63点が主たる調査対象の蒔絵だが8割方を終えたものの、完全に調査完了には至っていない。本年度は外部の違う研究ジャンルからの連携、協力が、大きかった。 1、高知大学、助教授岩崎望氏は海洋生物研究が専門。初音の調度に用いられている宝石サンゴは、日本産ではなく地中海サルジニア島産であろうとの驚くべき知見をもたらされた。サンゴ研究者を2度、同伴されて、初音の調度やほかの尾張徳川家伝来の宝石サンゴを調査。岩崎氏らの自然科学的アプローチは、今後上野の国立科学博物館で開催される「宝石サンゴ展(仮称)」に反映される予定。本研究では、初音の調度の部分的な復元模造を人間国宝の北村昭斉氏と室瀬和美氏の協力を得て、製作の準備中である。岩崎氏からは、材料となる宝石サンゴの無償提供を受けて、従来諦めていたサンゴの紅梅部分の製作も準備に着手ができた。ただしその切削加工は未解明な点が多く、現在の試作段階では数ミリの彫刻は、切削の途中で割れてしまうことが多く、解決に至っていない。 2、九州国立博物館では、昨年に引き続き、初音の調度3点(見台・角赤・文箱)を貸し出し展示した。同時に蛍光X線、CT分析など非破壊の2年目の科学的調査が行われた。この模様は、TBSテレビの経済番組「ガッチリマンデー4大国立博物館」でも放送されて、一般からも反響があった。昨年度の同様分析は、平成21年7月に日本文化財科学会(名古屋大学)で発表した。このような学際的なひろがりは本研究が着手された当初は予想もできず、さらなる多様な視点からの研究が、文化財資源としての初音の調度の国宝としての意義や価値を解明できることを予感させている。
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Research Products
(2 results)