2009 Fiscal Year Annual Research Report
『源平闘諍録』を基軸とした古代中世東国をめぐる軍記文学の基礎的研究
Project/Area Number |
19520133
|
Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
高山 利弘 Gunma University, 社会情報学部, 教授 (70197218)
|
Keywords | 平家物語 / 軍記文学 / 東国圏 / 真名字表記 / 異本 |
Research Abstract |
今年度は、これまでの検討によって確認された問題点について、月例研究会において研究発表を行って論文化し、論文7編(再録2編を含む)、資料1編、月例研究会の報告資料1編を収める「研究成果報告書」を作成した。 近世における『闘諍録』本文の伝来について、『善福寺縁起』の伝承を手がかりに、寛永年間の下総相馬氏周辺に現存『闘諍録』の存在を見出しうることが明らかになった。 『闘諍録』の依拠資料の問題として、高望王臣籍降下の時期をめぐる『闘諍録』の独自記事の問題から、数ある千葉氏関係系図のうち「般若院系図」の重要性を明らかにした。 また、構想および編纂意図をめぐる問題としては、千葉常胤の位置をめぐる独自の虚構の問題から、妙見信仰に連動する常胤の存在が『闘諍録』全体に大きく関わっていること、妙見菩薩を保持する常胤が、義経に従軍したと設定することにより、源氏方に勝利がもたらされたという独自の物語の志向が確認された。また、頼朝挙兵譚に関して、二所権現(伊豆山権現と箱根権現)が特に重視される傾向がある点を踏まえて、『闘諍録』においては、二所権現は頼朝挙兵の成功を保証すべき存在として位置付けられること、二所権現以外の神社が物語における役割を果たすという他の諸本の構成を拒否する姿勢が見られる点を指摘し、『闘諍録』成立の一端を明らかにした。 読み本系『平家物語』における本文流動の問題として、すでに指摘されている『闘諍録』と南都本的本文の流入の可能性を手がかりとして、本文流動の問題を検証した。 『闘諍録』の真名字表記および用字に関しては、その特異性を明らかにするための基礎資料として、本文中に読みが付された付訓語の索引を作成し、今後の研究に資することとした。
|
Research Products
(6 results)