2009 Fiscal Year Annual Research Report
日本語教員と理系教員との協働による日本語論文作成支援リソースの開発と評価
Project/Area Number |
19520457
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
村岡 貴子 Osaka University, 留学生センター, 教授 (30243744)
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Keywords | 日本語論文作成支援 / リソース / 専門日本語教育 / スキーマ / アカデミック・ライティング / 学習課題 / テキスト分析タスク |
Research Abstract |
本研究は、日本の大学院で学ぶ留学生を対象とした論文等の作成支援を目的としている。本年度は、昨年度に引き続き、対象留学生におけるライティングに関する調査を行い、アカデミック・ライティングに関するスキーマが形成されている学習者とそうでない学習者について、彼らが作成した文章や個別インタビューから質的な分析を中心に行った。学習者の作文をもとに編集した学習課題である「テキスト分析タスク」も、種類と量を増やし、電子化されたデータとして保存している。また、ライティングの学習課題のあり方について再考し、一定のコンセプトを持ち、継続性のある協働的なタスクの意義を検討した。学習者作文のコーパスも拡大し、91の文章データを、前年度までのデータに加えた。 上記のスキーマ形成については、具体的には、上記タスクの実施時における学習者の発言を記録し、その分析から、スキーマを有する成功者の発言に注目し、文章の論理展開や構造に言及した発言内容から、スキーマ形成状況を観察した。学期終了後のインタビュー調査も行い、成功者の発言や考え方を一定程度明らかにした。彼らは、厳密な文章評価の能力を有しているだけでなく、外国語学習に対して一定の信念を有しており、それらは彼らの個々の学習活動に少なからぬ影響を及ぼしていることが示唆された。つまり、表現や文法といった「部分」に捉われず、段落構成、トピックセンテンスの所在、および文章中の論理の一貫性にも及ぶコメントが見られた。成功者は、言語学習そのものを、研究活動や過去の種々の学習経験と関連付けて捉えたコメントを行っていた。このように、「部分」ではなく、「全体」や「構造」を意識的に捉え、自己の学習を客観的に見る視点は、成功者と未成功者との著しい差異であった。これらの成功者のコメントもデータベース化して未成功者への刺激に活用し得る可能性についても示唆を得た。
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