2009 Fiscal Year Annual Research Report
20世紀ロシア知識人のライフストーリーにみる親密圏と知的世界に関する研究
Project/Area Number |
19520636
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
松井 康浩 Kyushu University, 大学院・比較社会文化研究院, 教授 (70219377)
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Keywords | 回想録 / ロシア / 知識人 / 親密圏 / 日記 / ライフストーリー / 異論 |
Research Abstract |
本研究は、1930年代~80年代の時期の記述を含むロシア知識人の回想録、日記、手紙などのライフストーリー文書を収集検討することで、彼らの親密圏や知的世界を解明することを目指すものである。平成21年度は、昨年度に引き続き資料収集とその分析を行うとともに、具体的な研究成果を取りまとめる作業にも着手した。 前者に関しては、モスクワの「ナロードヌィ・アルヒーフ(民衆アーカイヴ)」所蔵のライフストーリー文書を昨年度に続きマイクロフィルムの形で継続購入し、その分析を進めた。特に、1920年代に反スターリン派に所属したため、1920年代末からスターリンの死去直前までの期間に計3度逮捕・投獄・労働キャンプ送りを経験し、1937年-38年の大テロルをも生き延びた稀有なケースといえる人物の回想録を入手できたため、その解読に着手した。異論や異議申し立てを育む知的環境=対抗公共圏と親密圏の関わりについての手がかりを探る試みである。 後者の成果取りまとめ作業に関しては、前に実施したモスクワ個人コレクション中央文書館・博物館(TsMAMLS)での資料調査に基づく成果として、「20世紀ロシア知識人のライフストーリー研究の可能性-歴史家の青年期の日記を分析する試み」を論文にまとめた。本稿は、研究代表者が編集した『20世紀ロシア史と日露関係の展望-議論と研究の最前線』(九州大学出版会)に収められ、公刊されている。また、ロシア史研究会の大会パネル「近現代ロシアの都市と文化」のパネラーの一人として「1930年代モスクワの都市文化と都市的共同性」と題する報告を行ったが、そこでは「民衆アーカイヴ」の文書調査から得られた知見を盛り込むことができた。
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Research Products
(2 results)