2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19530024
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
紙野 健二 Nagoya University, 大学院・法学研究科, 教授 (10126849)
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Keywords | 公務 / 協働 / 公共 / 行政主体 / 国家と社会 / 民間化 / 法関係 / 行政法体系 |
Research Abstract |
公共を実現する公務の実施主体は、もともと公権力主体と同一視され、法人格を有する主体をもつものとして行政主体の観念が用いられてきた。それは国家の実働部隊としての主体を意味し、公共の実現主体と同視されてきた。しかし、社会の中に存在する公共の制度的実現主体といっても、何も独占を意味するものでもないし、なお社会には多様な公共が存在するし、国家と社会が連携をとりつつこれを実現する例が以前から存在する。そして近時には、民間化や外部委託によってもその例が増えている。このようなものを協働と呼んで、新しい公共のあり方や公務の担い手として位置づける見方が流布している。 この年度の研究成果は、その定義の例を個々の実定法・条例や政策文書を検討して示し、参加や補完等の周辺の観念とのかかわり、そこにおける法学的論点等を示した。同時に、協働がただちに法学的検討の対象になるわけではなく、したがって根拠づけのほか、規律、支援、あるいは自治や自立の保障も含めて、法とのかかわりも多様であること、したがって徒に国家の側に協働を引き付けることは、その趣旨に反することをのべた。このような作業は、公務を担うものとしての公的主体の観念をいったん相対化するところに、重要な意義を有するものと考える。
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