2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19530024
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
紙野 健二 Nagoya University, 法学研究科, 教授 (10126849)
|
Keywords | 協働 / 協働主体 / 国家と社会 / 中間領域 / 中間団体 / 組織法 / 公務 / 行政法の体系 |
Research Abstract |
この年度においては、研究課題における基幹的観念である「公務」遂行の新たな主体と位置付けられる「協働主体」の所在を、国家と社会の変動の中で位置づけることを念頭において文献を広く参照し、研究活動を行った。この年度の末期になったが、台湾の高雄大学の研究者とこの問題について意見交換をし、またこの国ではまだ珍しい民間(社団法人台湾身心機能活性化運動協会)による老人ホーム(支持型住宅支援中心)を訪問見学するとともに高雄市当局にもヒヤリングを行い、福祉国家を経ないで少子化・高齢化社会の到来への対応を余儀なくされる下での、官民の協働のあり方と課題について考える機会をえた。 以上の活動に基づく成果は、「協働主体の基礎理論」(『行政法の再構築』法律文化社近刊)として、発表される予定である。そこでは、協働観念を国家と社会の変動への双方からの対応として、そこでの主体もまた、国家と社会それぞれの伸縮過程の中で双方の性格を併有して登場するものとして位置づけたうえで、社会的要請の拡大や制度的主体の機能不全の補完のための役務を、新たな主体が担う(担わざるをえない)現象に対して、これに法的規律(例えば組織的自律性とコントロールを確保し、根拠づけ、限界を画し、要件を定め、手続を定める)を及ぼすという、行政法における協働論の全体像にアプローチした。したがって、公的主体の国民主権的性格のコロラリーとそれを補完する他の主体の活動や、自由で自律的な社会的主体による公的活動を支援し公務の内容と水準を維持発展させる公的主体の活動を視野に入れた、組織、作用および救済に関わる法体系の存在と、それぞれの具体的目的に整合的な解釈論を構想し、体系づけることが可能となるのである。
|