2008 Fiscal Year Annual Research Report
貧困削減戦略時代のカナダの開発援助機関とNGO・市民社会の連携に関する研究
Project/Area Number |
19530142
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Research Institution | Ferris University |
Principal Investigator |
高柳 彰夫 Ferris University, 国際交流学部, 教授 (10254616)
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Keywords | NGO / 市民社会 / グローバル市民社会 / 貧困削減 / 援助効果 |
Research Abstract |
第一に国際開発におけるNGO・市民社会の意義について理論的に検討した。開発において国家政府は唯一の中心的なアクターであると考える「開発主義国家」の考え方に対し、NGO・市民社会はそれ自体独自のアクターとして「開発主義国家」を相対化する意義を持っている。また開発・発展論との関係では、NGO・市民社会の役割は、政府や市場の失敗を補完するボランタリー活動、ネオリベラルな開発論や経済グローバリゼーションに異議を唱える社会運動という、時に相対立する二つの側面を持つ。第二に、2005年3月に採択された経済協力開発機構の開発援助委員会(OECD-DAC)の「援助効果に関するパリ宣言」を受け、2008年9,月初旬にガーナのアクラで開催されたの援助効果に関する高級レベル・フォーラムで採択された「アクラ行動計画」と、アクラ・フォーラムに向けた「市民社会と援助効果に関するアドバイザリー・グループ」(以下、AG)の提言を分析した。パリ宣言は、(1)もっぱら国家間の援助に注目し、市民社会の独自の役割を軽視し、(2)途上国政府に一元化された「オーナーシップ」にもとづいて作成された開発戦略に対するすべての開発援助アクターの「整合性」と「調和化」を唱えた。これに対しAGは、(1)NGO・市民社会の独自の役割を認知すること、(2)オーナーシップは途上国の国家のみに一元的に所在するのではなく、市民社会や地方政府、議会などに多元的に存在すること。したがってNGO・市民社会組織や地方政府など非国家援助アクターもそれぞれのパートナーの「オーナーシップ」に整合すべきであり、国家政府の開発戦略を基盤とした「整合性」「調和化」は求められるべきでないこと、を提唱した。その一方で、南北のNGO・市民社会間でも南の「オーナーシップ」の尊重など、市民社会も援助効果の問題に一層取り組む必要性も述べている。第三に、カナダにおいてパリ宣言やアクラ行動計画、AGの活動を受けて、カナダ国際開発庁(CIDA)の新しい市民社会政策の策定について調査を行った。カナダは引き続き保守党少数与党政権の政権基盤が不安定なこともあり、新政策の策定が遅れているが、CIDA政策局スタッフによるワーキングペーパーが出され、これに対しNGOネットワークであるCCICがコメントを行っている。なお、タイを訪問し、カナダのNGOの駐タイ・スタッフやタイのNGOの全国ネットワークであるNGOCODの聞き取り調査を行い、「南のオーナーシップ」が強調される時代におけるNGO・市民社会のパートナーシップのあり方を探った。
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