2009 Fiscal Year Annual Research Report
貧困削減戦略時代のカナダの開発援助機関とNGO・市民社会の連携に関する研究
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19530142
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Research Institution | Ferris University |
Principal Investigator |
高柳 彰夫 Ferris University, 国際交流学部, 教授 (10254616)
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Keywords | 市民社会 / NGO / グローバル市民社会 / 貧困削減戦略 / 援助効果 |
Research Abstract |
本年度も貧困削減戦略時代の国際開発協力におけるNGO・市民社会組織(CSO)の役割について、理論とカナダの事例研究の両面から検討した。 近年、国際開発協力のNGO・CSO(以下、開発NGO・CSO)について海外の研究で議論されている、本当に経済成長中心の従来の開発論とは異なったオルターナティブな開発論を実践するアクターになりうるのかを考察した。第一に、グローバル市民社会を構成する他のアクター、特に社会運動団体と比較すると、開発NGO・CSOは、社会変革の運動、議論の空間の側面だけでなく事業実施体の側面を強く持つ。第二に、組織的にも開発NGO・CSOは専門性・プロフェッショナル性が強く、一種の官僚機構化が懸念される。第三に、近年の貧困削減戦略や援助効果が開発援助の実践で強調される中で、南の国家政府のオーナーシップと南の国家開発戦略への整合性や調和化が唱えられるが、これは国際開発における国家の役割の「復権」ともいえる。ODA機関す開発NGO・CSOに国家開発戦略の枠内での「飼いならされた」役割を期待する傾向がある。NGO・CSO「民主的オーナーシップ」は提唱し、市民社会の独自の役割の維持・拡大と「パワーシフト」の継続を目指している。 カナダの事例研究については、2009年9月にカナダをし、NGO・CSOとカナダ国際開発庁(CIDA)へのインタビュー調査を行った。2006年のハーパー保守党政権の誕生、特に翌年8月のオダ開発協力相就任以後、カナダのODA政策はむしろ国益追求の手段としての性格を強めている。ハーパー政権が打ち出した援助効果向上策とは、ODA重点国のアフリカからカナダとの通商関係が大きい中南米諸国へのシフト、重点分野での経済成長と慈善の指向へのシフトであった。2009年10月以降、ハーパー政権の対外政策に批判的なNGO・CSOのいくつかがCIDAからの資金的支援の打ち切りを通告したが、政府批判を資金的支援の判断基準にすることはこれまでの政権ではなかったことである。2010年8月下旬にモントリオールでCSOの開発効果に関する世界会議が予定され、カナダの開発NGO・CSOもそれに向け準備を重ねている。
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