2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19530161
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
赤尾 健一 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 教授 (30211692)
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Keywords | 多様性関数 / 属性アプローチ / 機能グループ / 生態系サービス / ナイト流不確実性 / 費用便益分析 |
Research Abstract |
生物多様性保全に関わって2つの理論的問題がある。第一に多様性の価値を表現する適切な多様性関数の特定化であり、第二に多様性喪失がもたらす結果に関する不確実性の表現である。本研究は、これら生物多様性保全の問題から生じる新奇な二つの問題(多様性関数と特定の確率分布を想定できない状況の意思決定)に取り組み、生物多様性の保全と経済活動の調和に資することを目的としている。 本年度は研究計画の最終年度として、これまでの研究成果を積極的に公表するとともに、政策上のインプリケーションを得るという観点から、これまでの研究の包括的な見直しと研究の発展方向を検討した。ここで政策上のインプリケーションとは、具体的な生態系の保全に関わる意思決定方法としての費用便益分析(CBA)への応用である。 多様性関数については、Nehring-Puppeの属性アプローチを見直すとともに、次のような生態系の価値関数を検討した。すなわち生態系の価値を、それを構成する個々の種の存在価値、機能グループと関連づけられる生態系サービスの価値、そしてその生態系固有の価値の合計と見なす。機能グループ内の冗長性は価値実現の確率と関連づけられる。 不確実性については、Gilboa-Schmeidlerの不確実性回避アプローチとともにBewley流のナイト不確実性のアプローチを取り上げ、生態系保全のための不確実性下でのCBAにこれらがいかに応用されるかを考察した。不確実性下での生物多様性の価値はオプションプライス(事前的確定的支払意志額)として評価される。2つのアプローチによるその額の大小を検討した。
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