2008 Fiscal Year Annual Research Report
ワルラスとフランスの経済学者たち-一般均衡理論の思想的起源の解明
Project/Area Number |
19530168
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Research Institution | Shiga University |
Principal Investigator |
御崎 加代子 Shiga University, 経済学部, 教授 (90242362)
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Keywords | 経済学史 / ワルラス / 経済思想 / 一般均衡理論 |
Research Abstract |
本研究の目的は、レオン・ワルラスの経済学の形成過程を、フランス経済学史、思想史の中で考察することにより、一般均衡理論の思想的起源を明らかにすることである。本年度は、昨年度から考察をすすめてきた、A.N.イスナールの主著『富論(Traite des richesses)』(1781)とワルラスの純粋経済学との関係について、その研究成果を5月の経済学史学会で報告した。ワルラスとイスナールは、これまで多くの研究者たちが主張してきたように極めてよく似たアプローチの交換方程式を共有しているが、その政策的意図や社会ヴィジョンについては大きな断絶が存在することを明らかにした。そしてこのことをより説得力をもって示すためには、イスナールの経済学の全体像をより詳細に示し、オーギュスト・ワルラスやフィジオクラートとの関係も視野に入れながら、従来の研究史にあるように純粋経済学のみを対象とするのではなく、社会経済学の分野も考慮に入れた多層的な影響関係を示すことが必要であることを認識し、今年度の研究はほぼその点に集中した。9月には18-19世紀のフランス経済思想研究の大家であるファッカレロ教授のセミナーに参加し、教授との議論からこのような研究アプローチの意義を再確認した。2-3月のフランスリヨン第2大学への出張では、イスナールの研究で知られるクロッツ教授、ワルラス研究者のポティエ教授やドケス教授と議論を交え、関係資料の調査も終えて、イスナールとワルラスの関係について結論をまとめると同時に、この問題に関連してオーギュスト父子の理論的思想的継承関係を明らかにする新しい論文の構想も練ることができた。次年度は、この二つの論文の完成と発表を目指す。
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