2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19530214
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Research Institution | Otsuma Women's University |
Principal Investigator |
浅井 澄子 Otsuma Women's University, 社会情報学部, 教授 (00329476)
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Keywords | 映像 / 音楽 / ヒットパータン / レンタル |
Research Abstract |
本研究の目的は、産業構造やメディア環境の変化のコンテンツの多様性に与える影響を計量経済学の手法を使って明らかにすることである。本年度は、前年に続き、音楽産業を対象に分析を進めるとともに、新たに映像産業を分析対象に加え、以下の2点を中心に分析を行った。 1点目は、音楽CDを対象にコンテンツの流通形態を普及モデルにより分析し、消費者がコンテンツに触れるタイミングの時系列変化と、CDやアーティストの特性別のタイミングの差異について定量的に分析した。その結果、インターネットが進展した2000年以降では、コンテンツの流通速度が上昇し、販売開始直後に売り上げが集中する傾向が高まったこと、知名度のあるアーティストの作品は販売が短期間に集中しているのに対し、知名度のないアーティストの作品は、長期間をかけて消費者の間に伝わっていることが明らかになった。ここで示された流通速度の上昇は、消費者が一定期間中に、より多くのコンテンツに接するようになったごとを意味する。 2点目は、映像コンテンツを収録したDVDの販売とレンタルの需要関数を連立方程式体系で推定することによって、販売とレンタルとの関係、ならびに両者と映画の興行との関係を明らかにした。推定の結果から、DVDの小売市場はレンタル市場に正の影響を与えるが、その逆に関しては明確な関係は見いだせなかった。また、興行で成功した作品は、DVDの小売市場でも多額の収入を得る傾向にあるが、興行の成否のレンタル市場への影響は、小売市場への影響よりも小さいことが示された。また、小売市場とレンタル市場における映像コンテンツのヒット要因には、差異があることが確認された。これらの結果から、消費者は映像コンテンツの入手手段として、DVDの購入とレンタルを使い分けており、レンタル制度が存在することは、消費者により多くのコンテンツに接する機会を提供していることが示唆された。
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