2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19530305
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
澤井 実 Osaka University, 大学院・経済学研究科, 教授 (90162536)
|
Keywords | 海軍技術研究所 / 海軍艦政本部 / 海軍航空廠(航空技術廠) / 陸軍科学研究所 / 陸軍技術本部 / 陸軍技術研究所 / 陸軍航空技術研究所 / 多摩陸軍技術研究所 |
Research Abstract |
(1)陸海軍の各研究機関の動向、(2)第1次世界大戦期からアジア・太平洋戦争期における各時期の特徴、(3)陸海軍における研究開発活動の担い手であった技術系文官・武官の供給構造、(4)陸海軍における研究開発と民間企業の関係の4点の解明を目的とする本研究では、最終年度の本年度はとくに陸海軍技術者の戦後との連続と断絶に留意しつつ研究を進めた。 陸海軍技術者の戦前・戦中・戦後における「連続と断絶」を考える事例として鉄道技術研究所(以下、鉄研と略記)を取り上げた。陸海軍技術者や航空技術者を戦後直後に大量に雇用したという意味で鉄研は彼らにとって「避難所」として機能した。ただし戦時期における武官と文官の区別は軍関係技術者の戦後の帰趨を大きく左右し、元武官身分の技術者の多くは公職追放の対象となったため、雇用先を見つけるのも容易ではなかった。 しかし、鉄研に残った陸海軍技術者や航空技術者はその後大きな役割を果たした。1952年4月末現在で鉄研の研究室長・主任研究員は71名を数えたが、そのうちの48名が終戦後に他所から転入したものであり、その内訳は海軍関係19名、陸軍関係10名、中央航空研究所9名、外地からの引き揚げ者4名、その他6名であった。陸海軍技術者に代表される戦後の転入者が鉄研に持ち込んだものは、研究開発に関する新しいアプローチであり、従来の「研究のための研究」スタイルに対して、与えられた課題を解決するために理論的・実験的手法を駆使しつつ、必要に応じて基礎研究にも遡及するという研究スタイルが拡がる契機となったのである。
|