2007 Fiscal Year Annual Research Report
障害者家族の生活世界から捉えた包括的な社会的支援のあり方に関する研究
Project/Area Number |
19530452
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
要田 洋江 Osaka City University, 大学院・生活科学研究科, 教授 (90117987)
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Keywords | 「知的障害」の定義 / ファシリテイテッド・コミュニケーション / 障害学 / 社会的障壁 / ライフストーリー法 / 生活の質 |
Research Abstract |
知的障害者と呼ばれる人びとがかかえる社会的困難のもっとも大きなものは、当事者と周囲の人びとを繋ぐコミュニケーションのあり方に発生する。すなわち、当事者が発するコミュニュケーション(言語、非言語、行動、態度を含む)を周囲の人びとが理解できないことから生じる。とりわけ、表出言語を持たない人びとや周囲の人びとに理解されない行動を持つ(いずれも重度知的障害と呼ばれる)人びとの問題は、周囲の人びとからなかなか理解されないという点で深刻である。本研究、もっとも身近な養育者であった母親の気づきによって、ファシリテーテッド・コミュニケーション(以下、FCと呼ぶ)を獲得した二人の自閉性障害を併せ持つ重度知的障害者の母親から、指文字や筆談という現在のコミュニケーション・レベルにまでFCを獲得した経緯、エピソードを聞くことによって、重度知的障害者へのコミュニケーション支援の必要性を明らかにするとともに、現状の社会福祉サービス領域において、知的障害者でのコミュニケーション支援が十分に進まない社会の壁について研究を行った。 本研究は、上記の問題意識から、現在20歳代の自閉性障害をもつ知的障害とみなされている2人の若者の母親へのインタビュー調査である。2ケースのライフヒストリーおよびFCにまつわる主要なエピソードを、それぞれの母親の視点から語ってもらい、その中からFCに関連した2ケースに共通するエピソードを取りあげ、分析考察した。 結果として、知的障害者のコミュニケーションを可能とするには、第1に、FCなどの支援的コミュニケーションにみるような、人を介したコミュニケーション支援の必要への理解と、第2に、FCへの理解には、「障害の医学モデル」である表出言語を前提とする専門的知識の転換が求められる。
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