2008 Fiscal Year Annual Research Report
死生観からの福祉国家研究凋共同墓をめぐるスウェーデンの宗教教育と日本の共同慰霊
Project/Area Number |
19530478
|
Research Institution | Chukyo University |
Principal Investigator |
大岡 頼光 Chukyo University, 現代社会学部, 准教授 (80329656)
|
Keywords | 死生観 / 宗教教育 / 福祉国家 / 共同墓 / スウェーデン / プロテスタント / 人権 / 市民宗教 |
Research Abstract |
家族の枠を越える共同墓等に見られる死生観が、福祉国家をどう支えうるかどうかを、主にスウェーデンの現地調査を通じて明らかにすることが本研究の目的である。 図書の論文で、公共的な老人介護の最終的根拠はすべての老人に「聖なるもの」を見出すデュルケムの「人格崇拝」を展開した論理で、それは「ケアの権利」という世俗の人権を宗教的レベルで支えると指摘した。そのうえでスウェーデンで人格崇拝の論理が受容された背景を探った。1960年代以降スウェーデンでは家族にたよらない公共的な老人介護と並行して、家族と死者の縁を絶つかのような共同墓が広がり、老人介護と死後の福祉が共にすすんだ。国教会だったスウェーデン教会(ルター派プロテスタント)は共同墓は異教的として反対したが、共同墓は、生者が死者の冥福を祈ることはできないというプロテスタントの教義の徹底で、福祉国家をささえる市民宗教を表す文化的装置であった可能性を指摘した。 雑誌論文ではスウェーデンの高校生への調査成果をまとめた。アンケートの結果、(1)スウェーデン教会と無宗派の学生の間で考えに違いが見られ、無宗派では墓への責任は社会にはないという考えが多く見られた。(2)老人への責任は、両派ともに社会にあるとした。インタビューの結果、(1)無宗派の学生の、死後は無で、墓に意味はないから社会に責任はないという話から、両派間の違いの理由のヒントがえられた。(2)すべての死者、特に貧者は生きるために闘ったから「社会の先祖」であるとするスウェーデン教会所属の学生には、ルター派の発想があることが確認できた。
|