2008 Fiscal Year Annual Research Report
加賀象嵌職人の日記による近代都市の職人生活史の社会学的研究
Project/Area Number |
19530479
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Research Institution | Bukkyo University |
Principal Investigator |
近藤 敏夫 Bukkyo University, 社会学部, 准教授 (70225621)
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Keywords | 日記分析 / 生活記録 / 生活史 / 職人 / 近代化論 |
Research Abstract |
本研究は明治期から昭和期に活躍した金沢の象嵌職人米澤弘安の日記およびその他の生活記録を収集し、職人世界からみた地方近代都市の形成と展開の過程、および都市論からする日本近代化の分析を試みるものである。平成20年度は、6月に1泊2日の研究会、9月に3泊4日の金沢調査と遺族へのインタビュー調査を実施した。米澤弘安の生活記録については未整理のものが多く、遺族の協力を得て資料収集を継続した。11月には研究代表者の近藤と研究協力者の水越、坪田が日本社会学会大会で報告をした。12月には近藤が国際社会学会(ISA)で報告をした。両学会報告では、米澤弘安の日記分析をさらに緻密に進めることに加えて、歴史的状況を調べることが課題とされた。平成21年3月に1泊2日で研究会および報告書の編集会議を開催した。研究会では、平成21年度の発表形式として、学会報告に加えてシンポジユウムを計画することになった。 金沢調査の進行状況としては、懸案であった大福帳の紛失部分が発見できなかったため、不完全ではあるが大福帳のデータベース作成に着手した。また、町内会関連の記録文書についてもデータベース作成に着手した。研究実施計画で予定していた生活記録(妻の手記、遺族のインタビューなどを追加)のデータベース化が遅れており、日記データベースとの統合作業に至っていない。 文献収集と並行して研究代表者と研究協力者がそれぞれ日記分析の作業を継続した。具体的には、1、伝統都市金沢の創出に果たした職人の役割、2、職人のエートスと近代化との関連、3、米澤弘安の政治意識、4、家運営にみる家父長主義の理念と生活実態が研究テーマとなった。これら4つの個別テーマを、地方近代都市の形成と展開および日本近代化論の再考という大きなテーマに位置付けて解釈することが今後の検討課題とされた。
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