2007 Fiscal Year Annual Research Report
生・死へのアクチュアリティに関する研究-社会福祉専門職教育での実践に向けて-
Project/Area Number |
19530541
|
Research Institution | Kawasaki University of Medical Welfare |
Principal Investigator |
井上 信次 Kawasaki University of Medical Welfare, 医療福祉学部, 助教 (80441484)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡本 宣雄 川崎医療福祉大学, 医療福祉学部, 講師 (40412267)
|
Keywords | 社会福祉学 / 社会学 / 生と死 |
Research Abstract |
平成19年度は、平成20年度の本調査に向けた理論研究、パイロット的な半構造化手法によるインタビュー調査を主に行った。1)理論研究は、木村敏「リアリティとアクチュアリティ」を起点として、E.Husserlの現象学もしくはA.Schutzの現象学的社会学の議論における、レリバンンス(relevance)等の諸概念が、本研究における重要な視点であるという知見を得た。レリバンスとは潜在的知識と志向性との関連性を理論的に解明するための重要な概念である一方で、分析概念としての有効性は議論されながらも、教育実践への援用性は議論されていない。この援用性を今後、議論する必要があることが明確になった。2)次の点が様々な情報収集の結果、議論すべき点として明確になった。特に終末医療期において、経験豊富な看護専門職とそうでない専門職とを比較したとき、当然、前者の方が状況に即した看護行為ができる。その一方で、経験年数が少ない看護専門職の方が、時として「優れた」患者とのコミュニケーションができるという。この点がある領域で議論されていた。これが議論される背景には、専門職としての「経験が豊富である」という状態へのアプリオリな信頼感と固定性という、いわばダブルバインド状態の存在を示唆している。このような看護専門職に関する問題関心を援用しつつ、福祉専門職における「経験」の意味内容を明確にすることが必要であるという問題関心を得ることができた。3)経験年数が長い介護専門職に対するインタビュー調査より、医療・福祉の臨床において、生と死に関連する場面に遭遇する際、その事象を病理学・生理学的な科学的な見地による検証である「事実的思考」と同時に、患者や利用者の価値、人生観、死生観を鑑みた「意味的思考」の重要性が明らかになった。
|