2008 Fiscal Year Annual Research Report
相補的ステレオタイプと社会システム正当化動機の関係
Project/Area Number |
19530560
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
池上 知子 Osaka City University, 大学院・文学研究科, 教授 (90191866)
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Keywords | 相補的ステレオタイプ / システム正当化理論 / 学歴社会 / 大学間序列 / 社会的格差 / 集団地位 / 社会的アイデンティティ理論 / 偏見 |
Research Abstract |
本研究は、相補的ステレオタイプ(物事はある次元で優ると別の次元では劣るとする暗黙の信念)が、社会的格差、もしくは格差を生み出す社会システムの維持、強化に結びつくというシステム正当化理論に基づく主張の妥当性を日本的学歴階層社会において検証し、格差是正への動機付けを高める方途を探ることを目的としている。 平成20年度は社会システム正当化動機(SJ動機)と社会的アイデンティティとの関係を検討した。一般に、序列の中位以下の集団に所属する人間にとっては、SJ動機は、自らの集団アイデンティティを維持高揚せんとする動機(SI動機)と拮抗すると考えられる。したがって、SI動機が強まれば、システム正当化動機にもとづく相補的ステレオタイプの効果は低減されると予想される。ところが、2種の動機が集団知覚に及ぼす影響を検討したところ、以下の知見が得られ、SJ動機はSI動機を凌駕することが示唆された。 1.大学生を対象に、所属大学より学力水準の高い大学と低い大学のイメージ、並びに所属大学への自己同一視の程度を測定した。その結果、自己同一視の程度が高くSI動機が強いと考えられる大学生のほうが、上位大学の能力特性は高く対人特性を低く評価し、下位大学の能力特性を低く対人特性は高く評価するという相補性を顕著に示した。 2.大学生に上位と下位の大学イメージを評定させるに際し、所属大学の劣位を顕現化し内集団高揚動機を喚起すると、喚起しない場合に比べ、上述の相補性が顕著になる傾向が認められた。
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