Research Abstract |
本年度は,キャンパスにおける事件・事故等の危機対応システムに関してコミュニティ心理学的観点から,ある危機事態に際して,どのように危機対応を行うか,どのように学内連携を行うか,どのように協働体制を構築,整備できるかを検討することを目的に事例研究を行った。 学内における器物損壊事件の事例研究では,以下の注意点が明らかになり,具体的に検討した。行為者の確証がもてない段階における対応,保護者へ加害者と決めつけにならないように配慮したの取り方,指導教員および学生の所属する専攻・学科との情報共有や役割分担,指導教員を支える体制づくり,配慮を要する学生入行動の限界を設定することや休養することへの導入,休んでいるときの連絡,復帰前の学生および保護者への対応,復帰後の治療的対応。 盗撮事件の事例研究では被害者への情報開示とケアについて検討した。情報の開示については,学生の不安鎮めることを目的に,なるべく小グループによる説明会を行い,参加者の反応を観察すること,その時点でわかっている事実を憶測を交えずに伝えること,全教職員が一貫して同じ説明を行うこと,わからないことはわからないと回答すること,事件・事故後のストレス反応について説明すること,個別のケアが必要な学生を発見し,ケアを行うことの重要性が明らかになった。 友人や兄弟を自殺で喪った学生の長期経過における対応についての事例研究では,亡くなった人の話が主とならない面接で,来談者自身の問題や葛藤を話すこと,喪ったことに対する話されない内容への配慮,精神科的治療の導入,家族も含めたグリーフケアの課題が明らかになった。
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