2008 Fiscal Year Annual Research Report
EU統合とシチズンシップ教育の再構築-ドイツとオーストリアの事例から-
Project/Area Number |
19530751
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
中山 あおい Osaka Kyoiku University, 国際センター, 准教授 (00343260)
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Keywords | 比較教育学 / シチズンシップ / 民主主義教育 / EU統合 / ヨーロッパ審議会 / ヨーロッパ・コミッション |
Research Abstract |
本研究では国境を越えて活発な議論や実践が行われているヨーロッパのシチズンシップ教育に焦点をあわせ、ヨーロッパ審議会やEUの構想する新たなシチズンシップのあり方を明らかにするとともに、それがドイツやオーストリアで取り組まれているシチズンシップ教育にとのように影響しているのかを具体的に検証することを目的としている。20年度はブリュッセルにあるEUのヨーロッパ・コミッションのHinge1氏を訪れ、EUがこれまで行ってきたEU加盟国のシチズンシップ教育の現状調査やその達成度をはかる評価基準の作成についてインタビュー調査を行った。また、前年度に引き続きオーストリアでは文科省を訪れ、政治教育部門のWirtitsch氏のインタビュー調査を行うとともに、政治教育センターにおいて資料収集を行った。オーストリアではシチズンシップ教育は全教科を横断的に束ねる教育方針として位置づけられ、教科として教授されていなかったが、近年は歴史教育のなかに政治(Politik)教育を付加するカリキュラム改訂が進んでいる。一方、政治教育がシチズンシップ教育を担ってきたドイツでは、ギーセン大学教育学部の訪問調査とヘッセン州で行われたシチズンシップ教育会議への参加により、EU及びヨーロッパ審議会の提唱するシチズンシップ教育の受け止め方が多様であることが明らかになった。特に、政治教育担当者とそれ以外の教科や課外活動の分野においての提携が大きな課題として浮かび上がった。政治教育がもともとあるドイツと政治教育を担う教科がなかったオーストリアでは、シチズンシップ教育の実施形態が異なり、ヨーロッパ審議会やEUの構想に対するシチズンシップ教育に対する反応にも違いが生じている。このようにアプローチの異なる二国の視点からヨーロッパレベルのシチズンシップ教育の構想を捉え、その有効性を検証する研究はあまり例がなく、意義は高いと考えられる。
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