2009 Fiscal Year Annual Research Report
グローバル化時代のインフォーマル経済とバリューチェーン
Project/Area Number |
19539002
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
遠藤 環 Saitama University, 経済学部, 講師 (30452288)
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Keywords | インフォーマル経済 / バリューチェーン / 都市 / 東南アジア |
Research Abstract |
本研究の目的は、グローバル化時代のインフォーマル経済に注目しながら、バリューチェーン(value Chain)分析を、経済的側面、制度・社会的側面の両方から実証的に検討することである。平成21年度は一昨年度から引き続き、工場の経営者及び労働者、内職労働者を対象にした実態調査を実施した。また、マクロな視点からは、輸出入統計のより詳細な検討、商工会議所の靴産業部局や、工業省などにおける資料収集、インタビューを行った。 現在までに明らかになった点は下記の通りである。第1に、タイの靴の主要な輸出先は、アメリカ、ベルギーなど欧米諸国が中心である。とはいえ、アラブ首長国連邦や中国なども重要な地位を占める。欧米諸国に対する輸出が年々減少しているのに対して、中国やその他の近隣アジア諸国(パキスタン、ミャンマー、スリランカなど)に対する輸出は増え続けている。第2に、タイの労働集約産業を資本の特質から区分すれば、大きくはグローバル資本、タイ系地場資本、零細資本の3つが抽出できる。個別の企業へのインタビューから類推されるのは、前者2つは主に西欧諸国や日本をターゲットにしているのに対して、零細資本は近隣アジア諸国のローニッチ市場をターゲットにしている点である。ただし、残念ながらその全体像を把握出来るような統計や先行調査は存在していない。第3に、零細資本のケーススタディでは、近隣アジア諸国のローニッチ市場をターゲットとした企業は、2008年度以降の金融・経済危機の影響をあまり受けておらず、順調に生産活動を拡大している点が明らかになった。例えば、ある工場では、スリランカにおける現地工場の設立、タイの工場における移民労働者の雇用(カンボジア人)や東北地方の農村へのアウトソーシングなどを巧みに組み合わせ、安定した事業拡大を見せている。平成22年度は、零細資本の競争力の源泉にも注目しながら一層調査を進めると共に、研究成果の発表も行っていきたい。
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Research Products
(1 results)