2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19540430
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
藤森 裕基 Nihon University, 文理学部, 准教授 (80297762)
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Keywords | 水 / 液体 / 融解 / 熱測定 / DSC / シリカゲル / 相転移 / ナノサイズ |
Research Abstract |
大気圧下で水を通常の方法で冷却した場合、液体として存在できる下限温度(均一核生成温度)は235Kであるが、その温度以下・高圧下において、水には低密度水と高密度水が存在する可能性が計算機シミュレーションによりを指摘されている。バルクの水は235K以下で結晶化するため実験により2種類の水を観測した例はない。水の融点は273.15Kであるが、その水を一次元の細孔径を持つMCM-41型シリカゲルに充填し示差走査熱量分析(DSC)を行った結果、細孔径の逆数に依存して水の融点が低下することが見出された。また、細孔径2.2nmと1.4nmの試料では細孔内部の水の融解に関する顕著な熱異常は観測されず、水が過冷却して110K付近まで結晶化しない可能性を見出した。そこで、さらに融点を低下させるために、水に不純物としてNaClを混合し、 DSC測定を行った。その結果、 NaCl水溶液中の水の融解(凝固)、共融混合物の融解(凝固)、ガラス転移が観測された。 NaCl水溶液中の水の融解は、バルクおよび細孔径の大きな試料で観測された。同じ細孔径の場合、水の融点は、 NaClの添加量に比例して低下することが見出された。共融混合物の融解はバルクと細孔径の大きなシリカゲルで観測されたが、細孔径が3.1nm以下では共融混合物の融解が観測されず、代わりにガラス転移が見出された。このガラス転移は、サンプル中で結晶化しなかった液体成分の凍結に起因するものと考えられる。以上の結果、水に不純物を添加し、さらに細孔内に閉じ込めることにより、水の融点が大きく低下することが見出され、低温域でも結晶化しない水の存在が示された。
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