2008 Fiscal Year Annual Research Report
NMR分光法を用いてランダムコイル状態のタンパク質を残基レベルの分解能での解析
Project/Area Number |
19540431
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
野田 康夫 Kwansei Gakuin University, 理工学部, 教育技術主事 (40268511)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
瀬川 新一 関西学院大学, 理工学部, 教授 (70103132)
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Keywords | 生物物理 / タンパク質 / リゾチーム / 核磁気共鳴 / ジスルフィド結合 / ランダムコイル / 重水素交換 / ジメチルスルホキシド |
Research Abstract |
天然卵白リゾチームにはSS結合が4本存在する。その中の特定のSS結合を欠損させたリゾチーム変異体を蛋白工学的手法で作製し、高分解能のNMR分光器を用いた原子レベル分解能における研究は4つのSS結合の影響を1つ1つ系統的に着実に解明するのに重要である。 SS結合を一本だけ残した1SS変異体の中で、Cys64-Cys80間にのみSS結合が形成されている1SS-3変異体を作製した。M9培地を用いることにより^<15>N同位元素でラベルされたサンプルを精製することが可能となる。NMR測定溶媒として一般的な水溶液系の溶媒ではピークが幅広化するおそれがあるので、ジメチルスルホキシド(DMSO)を使用した。するとNMRスペクトルの各ピークは十分に解析できる線形になり、3次元NMRスペクトルを用いて1SS-3変異体の主鎖アミドプロトンピークに対する同定が可能となった。秩序構造を調べるために重水素交換反応法を用いるが、一般的な方法ではスペクトルを測定するまでにほとんどのアミドプロトンは重水素と交換してしまうために時間変化を追跡することができない。そこで一旦重水素で溶解し反応時間後に溶媒を凍結し反応を停止させる。そのサンプルを真空で乾燥させることにより溶媒を取り除き、NMR測定溶媒として易動性のプロトンを持たないDMSOを用いてNMRスペクトルを観測する。ここで3次元NMR法を用いて決定したピーク同定を活用して、1SS-3変異体の各々の主鎖アミドプロトンにおける重水素交換反応速度を決定することができた。その結果より1SS-3変異体はギ酸緩衝液中でランダムコイルに近い構造であると考えられ、このことはCDスペクトルから得られた結果とも一致している。
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