Research Abstract |
今日,分子認識化学の研究は飛躍的に発展し,多彩な機能を集積した超分子化学へと展開されている.新たなホスト分子の開拓は,これらの研究の基盤となる上,高性能触媒,高感度センサー,精密分離材料などの先端機能性材料の創製にも欠かせない.交付初年度となる平成19年度においては,新規ホスト分子となるアザカリックスアレーン類を合成するとともに,以下の3つの観点から同化合物の物性について検討を行った. (1)コンホメーション解析と分子認識挙動:アザカリックス[4]アレーン完全メチル化体を合成し,同分子の1,3-alternateコンホメーションが,結晶中のみでなく溶液中においても固定されていることを温度可変NMRおよび緩和時間の測定から明らかにした.堅固な分子構造を反映して,同分子はカリウムイオンを選択的に包接することが分かった(Chem. Lett.,2007,34,1374-1375). (2)架橋窒素原子の電子的効果:アザカリックス[4]アレーン完全メチル化体について,酸化挙動の評価ならびにESR測定に基づく酸化種の同定を行い,架橋窒素原子が芳香環と共役していることを明らかにした.特に,同分子のジカチオンラジカルは,基底三重項状態であることが分かった(Chem. Commun.,2008,印刷中). (3)架橋窒素原子の水素結合形成能:アザカリックス[6]アレーンヘキサメチルエーテルを合成し,その結晶構造の解明を通して,架橋窒素原子が水素結合部位として機能することを明らかにした.また,同分子のヘキサン包接結晶から溶媒を除去すると,得られた微粉末結晶が,二酸化炭素を選択的かつ迅速に吸蔵することを見いだした(論文投稿中).
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