2007 Fiscal Year Annual Research Report
初期ルネサンス建築理念と人文主義思想との関連性に関する研究
Project/Area Number |
19560653
|
Research Institution | Aichi Sangyo University |
Principal Investigator |
石川 清 Aichi Sangyo University, 造形学部, 教授 (40193271)
|
Keywords | 人文主義 / 初期ルネサンス / ブルネレスキ / フィレンツェ / 建築理念 / アルベルティ / ブルーニ / 都市条例 |
Research Abstract |
レオナルド・ブルーニの著作『フィレンツェ市頌』は、今日一般的に1403-04年頃の作品と推定されている著作で、ちょうどフィレンツェがミラノのジャンガレアツォの死によって、危機から逃れた時代の著作である。表面上はlaudes、つまり中世以来の都市礼賛文学のジャンルに属するが、実際には紀元100年頃のアエリウス・アリスティデスの『パナテナイコス』に倣ったものであり、古代ギリシャのモデルを利用した模倣的な作品とされていたが、ペルシャの脅威からアテネがギリシャの自由を守ったというアイリオスのアリスティデスの図式がフィレンツェのミラノのそれに重ねられたものであった。また、ブルーニのもう一つの著作『フィレンツェ人民史』はフィレンツェ史を暴君に対する自由人の永続的な闘争として捉えたブルーニの代表的著作である。彼の墓碑では手元に『フィレンツェ人民史』を携えている。彼は平等な市民の政治的権利や、国家による公的顕彰の平等性こそ、市民の能力を覚醒させると説いたリゴリストであり、これの言説は建築家にも多大な影響を与えた。 この根拠が都市条例の条文に確認できた。ブルーニはその政治的著作の中で建築を政治の道具として用いている。フィレンツェ建築は、トスカーナ地方におけるフィレンツェの定められた政治的地位の象徴となったと考えられる。フィレンツェが古代の理想都市に値するのかという問いに対する彼らの探究に中で、人文主義者たちは建築に対する新しい認識を形成し始めたと考えられ、その様相が本年度の研究によって解明できたと考えている。
|