2009 Fiscal Year Annual Research Report
アリ類多様性はアリ擬態グモの多様性創出の鋳型となっているか
Project/Area Number |
19570094
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
橋本 佳明 University of Hyogo, 自然・環境科学研究所, 准教授 (50254454)
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Keywords | 生物多様性 / 熱帯雨林 / アリ / アリゲモ / 擬態 / 共進化 / 創出機構 |
Research Abstract |
熱帯雨林で高い生物多様性が創出されている機構を解明するために,熱帯で高い生物多様性をもつアリ類とその擬態クモ類の関係に着目し,本科研費研究において,ボルネオ島熱帯雨林で両グループの多様性構造の関係を調べた。本研究の最終年度になる21年度においては,追加サンプリングとこれまでのデータの解析を行い,その結果,1) 熱帯での高いアリ類多様性は森林垂直構造利用様式の多様性によって維持されおり、低木層では地中と樹上営巣性アリ類が混在することで高い種多様性が,一方、樹冠層ではCrematogasterやCamponotus属の特定種が優占して低い多様性が見られること2) アリ類のベイツ型防衛擬態者であるアリグモ類の種多様性はアリ類の多様性が高い低木層で高く,アリ類の多様性が低い樹冠層では低いこと(出現アリグモ類の分類構成:低木層2科8属,樹冠層2科3属,1サンプリング当りのアリグモ出現率と個体数:低木層23%2.43,樹冠層11%1.60)3)さらに低木層では複数のアリ種に似た中間的な擬態種の比率が70%と高くその形態的多様性も高いのに対し、樹冠層では優占するアリ属に良く似た擬態種の比率が71%と高く形態的多様性も低いこと4) 両層でサンプリングされたアリグモ類とアリ類で体長の頻度分布と体色パターンの比率は良く一致すること,などをはじめて明らかにすることができた。また,これらの結果から,熱帯での高いアリ類の多様性がアリ擬態グモ類の多様性を創出する鋳型として機能していることを世界にさきがけて公表すべく準備を行なった。さらに,次のステップとして,アリとアリグモ類がともに最高位の捕食者であることに着目して,アリ類多様性が創出したアリグモ多様性が,食物連鎖網にどのような変化をもたらし,その場の生物多様性と生態系の維持機構にどのような影響を与えているのかを解明するための準備にも取り組んだ。
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Research Products
(2 results)