2007 Fiscal Year Annual Research Report
収穫に伴う過敏感反応のシグナル伝達と発生機構の解明による新規切り花花卉の開発
Project/Area Number |
19580027
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
土井 元章 Shinshu University, 農学部, 教授 (40164090)
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Keywords | 収穫 / 過敏感反応 / シグナル伝達 / クロロフル蛍光 / 光酸素ストレス / 葉面電位 / カンナ |
Research Abstract |
カンナ葉の収穫(茎の切断)に伴う即時的な情報伝達と葉身の褐変障害発生の諸特性を把握し、障害発生の回避法について検討した。カンナ葉を晴天日の昼間に収穫すると、数分以内に葉身が巻き込み、1時間後には葉身の先端や基部、葉縁に褐変障害が発生して内側へと広がっていった。これらの収穫に伴う葉の巻き込みや障害発生は、葉齢が進んだ葉ほど激しかった。次に、収穫時刻の違いが障害発生に及ぼす影響をみたところ、収穫前が明期である時刻の収穫において激しい障害発生がみられた。日の出から9時までの間では、それまで受けた日射量が多くなるほど障害が激しく発生した。なお、収穫後の明暗条件は障害発生に影響しなかった。障害発生のみられない若い葉では収穫に伴い蒸散速度が低下したのに対して、葉齢の進んだ葉では気孔が開き蒸散速度が急増した。しかし、気孔が開いているにも関わらず、クロロフィル蛍光が増加して量子収率が低下した。茎を完全に切断せずに傷つけのみを行った場合には障害は発生しなかったが、その茎を完全に切断すると障害が発生した。茎の切断に伴う葉面電位の変化を測定したところ、葉面電位は収穫後1分以内にマイナス方向に約50mV変化し、その後30分間はそのままとなった。収穫位置の上下を銅線でつなぐと葉身の巻込みは軽減され、収穫位置より下の茎部と葉身をコンデンサに接続することにより、葉身の巻込みをほぼ完全に抑制することができた。しかし、これらの接続をはずし室内に取り込んだ場合、褐変の発生を抑えることはできなかった。これらの実験結果から、茎を完全に切断することで切断刺激は電気的に葉身に伝わり、葉身と茎部に電位差を生じさせ、障害の発生をもたらしているのではないかと考えられた。また、障害発生が明条件に置かれていた葉でしか起こらないこと、収穫に伴い光収率が低下することから、障害発生には光酸素ストレスが関わっていることが示唆された。
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