2008 Fiscal Year Annual Research Report
失われた磯環境の回復-護岸壁潮下帯生物群集の再生要因の解明と環境修復
Project/Area Number |
19580384
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
加戸 隆介 Kitasato University, 海洋生命科学部, 教授 (40161137)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
難波 信由 北里大学, 海洋生命科学部, 講師 (20296429)
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Keywords | 護岸壁 / 生物群集 / 群集再生 / フジツボ / キタムラサキウニ / 大型海藻 / ウニの摂食圧 / 杭 |
Research Abstract |
1.潮下帯藻類および動物群集に及ぼすフジツボの効果とウニによる影響:アカフジツボの有無×ウニ排除網囲いの有無、の計4実験区を設定した試験板を護岸壁に設けて昨年度と同様の実験を行った。その結果、2008年は晩冬からの水温低下により、マコンブが多数繁茂し、有網区の何れの試験板にも付着した。ただし、アカフジツボなしの試験板の方により多くのマコンブが付着した。観察時の昇温によるマコンブの斃死対策により、マコンブを自然死する8月まで観察することができた。一方、動物の多様性はアカフジツボ付着試験板で大きかった。無網区では、フジツボの有無にかかわらず、藻類の生長は見られなかった。この結果は、護岸壁においてもウニによる摂食圧の抑制が藻類の付着・生長に重要であり、生物多様性の向上にアカフジツボの存在が効果的であることを示唆している。一方、マコンブの付着は、マコンブ胞子の供給量に依存し、必ずしもアカフジツボがマコンブの付着を助長する訳では無かった。 ンブの付着を助長する訳ではなかった。 2.基盤の凹凸が生物群集形成に及ぼす影響:基盤表面の凹凸がもたらす生物群集形成効果を調べるため、フジツボ型凹凸と対照×網囲いの有無、の計4実験区を設けて、群集形成・維持効果を検証した。その結果、無網で凹凸のない試験板には、マコンブの付着はごくわずかだった。それ以外の実験区ではマコンブが付着したが、凹凸が存在する場合には、付着部や藻体がしっかりしており、網のある場合には、1ヶ月ほど長く残った。一方、凹凸の存在は動物の多様性が高く、網の有無より影響が大きかった。 3、ウニの摂食阻害による藻類群集維持:昨年の屋内、屋外実験で、効果の認められた杭による摂食阻害について、試験板の一番外側の杭間隔を2.5cm(杭間隔5cm実験区)または1.5cm(杭間隔3cm実験区)とすることで、垣根構造による摂食阻害効果について2008年4月中旬から9月上旬まで現場実験を行った。その結果、マコンブは水温が17℃以下であった7月末までは生長を続けたが、18℃を越えた8月以降には枯死することが解った。7月末までの杭によるウニの摂食阻害効果をマコンブ葉長、藻体数の2点から検討した結果、杭間隔3cmが最も効果的であったが、杭間隔5cmでは対照と同等か、場所によっては対照が勝っていた。杭の存在はマコンブ藻体による鞭打ち効果を減ずることも考慮する必要がある。 以上をまとめると、護岸壁の生物群集を再生するには、ウニによる摂食圧の減少が必須であるといえる。ウニによる摂食圧を減ずる現実的な方法としては、杭の設置や護岸壁表面に凹凸を与える方法が考えられる。後者の方法として、フジツボの付着を積極的に促すことが検討に値するだろう。
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