2009 Fiscal Year Annual Research Report
失われた磯環境の回復-護岸壁潮下帯生物群集の再生要因の解明と環境修復
Project/Area Number |
19580384
|
Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
加戸 隆介 Kitasato University, 海洋生命科学部, 教授 (40161137)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
難波 信由 北里大学, 海洋生命科学部, 准教授 (20296429)
|
Keywords | アカフジツボ / キタムラサキウニ / 護岸壁 / 生物多様性 / 摂餌圧 / 日間摂餌量 / 凹凸 / 障害効果 |
Research Abstract |
1. アカフジッボ存在による藻類およびキタムラサキウニへの影響 この実験により、1) アカフジツボは潮下帯では比較的短命、2) アカフジツボ存在下では、春期に藻類の被覆度が高く、藻類被覆度がより長く維持される、ことが判明した。他の実験結果を考慮すると、フジツボの存在はウニの摂餌行動の妨げになったと推測される。アカフジツボに代わる凹凸をもつ試験板においても同様の結果が得られた。また、凹凸の存在により生物多様性も高かった。→アカフジツボまたは凹凸の存在は生物多様性を高め、ウニによる藻類への摂餌圧の抑制に多少の効果がある。 2. キタムラサキウニに対する人工障害物の影響 基板に杭を設けることによるウニの行動への障害の程度を実験室で調べた。ウニの匍匐行動への障害物として3cm間隔の杭を設けた剣山状の板を用い、板幅を30cm、60cm、90cmと変えた場合の障害物通過に要する時間は、障害物幅に比例して増加した(90cmの場合、およそ3時間)。一方、通過までの移動距離は対照と有意な差がなかったことから、杭の存在はウニの道程に影響を与えないことが示唆された。→障害物としての杭の存在は、通過時間に影響を与えるが、ウニの動きを撹乱する効果は期待できない(殻径5cm程度のキタムラサキウニの場合)。 3. キタムラサキウニの摂餌圧に及ぼす水温の影響 水温10℃と15℃におけるキタムラサキウニの摂餌量を明らかにする目的で、個体毎の日間摂餌量の変化を1週間調べた。その結果、15℃で微増したが有意差はなかった。今後、20℃条件下での実験が必要と考えられた。→ウニは毎日飽食量を食べ続ける訳ではなく、日間摂餌量に大きな変動があることが新たに判明した。 以上の事実から、護岸壁の生物多様性を向上させるためには、ウニ密度の低下、護岸壁面への凹凸や障害物の付与が効果的と考えられた。
|