Research Abstract |
[1]・ヒト腫瘍細胞株HeLaおよびHepG2はTRAIL感受性が低く,TKAILレセプター2(DR5)は,細胞膜に発現した他,核内での発現が強かった. ・TRAIL感受性が高い腫瘍細胞株DU145も細胞膜に発現したが,核内は少なく,細胞内顆粒と細胞質に認められた. ・DR5のアミノ酸配列に,importin, transportinによる核移行シグナル,exportinによる核外移行シグナルがあることから,importin β1のsiRNAを導入し,importin β1ノックダウンを試みた.その結果,HeLaでの細胞内局在は,核内からゴルジ体を含む細胞質に劇的に移り,この時,TRAIL感受性が上昇した. ・免疫沈降とウェスタンブロットより,HeLa細胞内のDR5とimportin β1の結合が確認された.以上より,腫瘍細胞のDR5の一部は,細胞膜に発現せずに核内に隔離され,結果的にTRAILにより誘導されるアポトーシスから逃れている可能性が示唆された。現在,臨床応用を視野に,importin β1ノックダウンに代わる薬物がないか引き続き検討中である. [2]・マウスで自然発症に近い癌の治療に,DR5に対するアゴニスティック抗体繰り返し投与が有効だが,系によってヒト原発性硬化性胆管炎(PSC)様の胆管閉塞を起こして死亡した. ・C57BL/6(B6)とBALB/cマウスの総胆管を結紮して胆汁うっ滞モデル(CBDL)を作製,この原因を解析した結果,B6マウスは胆管上皮細胞のDR5,TRAILの発現が亢進,胆管炎を発症したが,B6-TRAILノックアウトマウス(KO),B6-DR5KOでは胆管炎は軽度で,生存期間が延長した. ・元々DR5の発現が低く,抗DR5抗体投与で変化の無いBALB/cマウスでも,CBDLでTRAIL,DR5の発現が亢進,更に抗体投与でPSC様の胆管閉塞を起こし死亡した. 以上より,胆管上皮細胞のTRAIL/DR5が胆汁うっ滞性疾患において重要で,ヒトへの癌抗体療法でも副作用に注意する必要性が示唆された.
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