2009 Fiscal Year Annual Research Report
宿主免疫応答を制御する結核菌由来ミコール酸修飾因子の研究
Project/Area Number |
19590453
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
藤原 永年 Osaka City University, 大学院・医学研究科, 講師 (80326256)
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Keywords | 感染症 / 細菌 / 脂質 / 生理活性 / 免疫学 |
Research Abstract |
結核菌に特徴的なミコール酸を詳細に分析すると炭素鎖長、構成分子種(α、メトキシ、ケト、ジカルボキシ、エポキシ等)、不飽和度(シクロプロパン環、二重結合)、幾何異性体等、その構造にバラエティーがあり、結核菌の形態(コード紐状)や抗酸性に加え、宿主防御機構への関与が想定される。本年度は、前年度の研究成果から得られたミコール酸合成遺伝子欠損△kasB株について、その構造や宿主応答に与える影響について解明した。△kasB株は親株に比ベミコール酸炭素鎖長が2-6個分短鎖になっていた。α、メトキシミコール酸の炭素鎖長は2分子分、ケトミコール酸は6分子分短鎖であった。興味深いことは、幾何異性体に変化が生じトランスタイプのメトキシ、ケトミコール酸が激減していたことである。結果として△kasB株はミコール酸の鎖長が短くなり、シスタイプのみのα、メトキシ、ケトミコール酸サブクラスから構成されていた。主な表現型として抗酸性の減弱化と弱毒化を示した。透過電子顕微鏡観察でミコール酸を多量に含む細胞壁を中心に△kasB株、親株、相補株で比較観察した。3株間で細胞膜を含むcell envelopの厚さに有意差はなかった。一方、細胞膜と細胞壁部分の電子密度は△kasB株が親株、相補株に比べ常に高値を示し、細胞壁ミコール酸密度が抗酸性を含む表現型に関与していることが示唆された。△kasB株のミコール酸短鎖化は親株が炭素鎖80-86に対して数%程度であり、表現型への影響の度合いは低いと考えた。むしろトランス型ミコール酸の欠失が細胞表層の分子間ミコール酸配列に影響して細胞表層の変化をもたらし、抗酸性や宿主応答の変化に重要であると考えられた。
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