2009 Fiscal Year Annual Research Report
II型糖原病のための新生児スクリーニング法ならびに化学シャペロン療法の分子基盤
Project/Area Number |
19590563
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
奥宮 敏可 Kumamoto University, 大学院・生命科学研究部, 准教授 (50284435)
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Keywords | リソソーム病 / ポンペ病 / II型糖原病 / 酸性α-グルコシダーゼ / 酸性マルターゼ / 新生児マススクリーニング / 血液濾紙 / 遺伝子多型 |
Research Abstract |
申請者らはこれまで、II型糖原病(ポンペ病;酸性α-グルコシダーゼ欠損症)の早期診断法の開発を目的として、血液濾紙による酵素活性測定法ならびに当該遺伝子上の多型解析法を確立し、日本人を含むアジア人に存在する固有の遺伝子多型(c.1726Aとc.2065Aのホモ接合体:AAホモ接合体)が、酵素診断の診断精度を低下させることを明らかにしてきた(Mol Genet Metab 97:190-195,2009)。今年度は、天然基質の1つであるグリコーゲンを基質とした血液濾紙中の酵素活性測定法の開発を行った。この新規測定方法の開発により、健常AAホモ接合体と患者の識別率は有意な改善傾向を示した。現在、さらに症例数を増やし、その診断精度を検証中である。また、本法は、マルトオリゴ糖などの天然基質やその誘導体の分解活性測定に応用できることから、今後、新たな基質による酵素診断法も検討を進める予定である。 昨年度までに構築した変異酸性α-グルコシダーゼの発現系を用いて、細胞内における変異酵素蛋白質に対する化学シャペロンの効果ならびに細胞内蛋白質分解系の1つである小胞体関連分解(ERAD)との関連性を検討した。40種の変異酵素の内、13種の変異酵素がN-butyl-1-deoxynojihmycin(NB-DNJ)に反応し、細胞内酵素活性の上昇を示した。これらは細胞内でのプロセシングが正常化しており、NB-DNJ濃度依存性に成熟体酵素の増加が認められた。一方、NB-DNJで活性上昇を示した変異酵素は、NB-DNJ非存在下では細胞内で分解処理されているが、その多くにはプロテアソームを介したERADが関与していないことが示唆された。現在、ERストレス応答やオートファジー等も含め、細胞内分解処理系と化学シャペロンの効果について更に詳細な解析を行っている。
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