Research Abstract |
重症筋無力症(MG)においては,免疫抑制療法,特にステロイドが治療の基本となっているが,その副作用も問題となるところである。近年,治療期間の短縮,患者のQOL改善を目指して新しい治療法の導入が期待されている。我々は,我が国で開発されたカルシニューリン阻害薬の一つであるタクロリムス(FK506)の作用に注目して研究を進めた。今回は,その安全性と有効性についてレトロスペクティブに調べた。86例の新規に診断された患者ならびに9例のステロイド抵抗性の患者の治療歴を調べるとともに,末梢血単核球のサイトカイン産生能を測定した。タクロリムスによるステロイド減量効果は,治療開始30ケ月後にてステロイド減量効果があることがわかった。一方,すでにステロイドが投与されていて,症状再増悪のためステロイド減量が出来ない患者でも,タクロリムス投与6ケ月後からステロイド減量が可能であることが示された。サイトカイン産生能を調べたところ,タクロリムス投与患者では,Interleukin-12(IL-12),IL-17,Interferon-γ,Granulocyte macrophage colony-stimulating factor,Tumor necrosis factor-αなどの産生低下が観察され,一方,IL-10の産生増加があった。このことは,タクロリムスがT細胞,マクロファージの機能を抑制する一方で,制御性T細胞の活性を増強する可能性を示している。近年,抑制性T細'胞の自己免疫抑制作用に注目が集まる中,我々の報告は今後の鵬治療のあり方に重要な知見を提供したものと思われる。
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