2007 Fiscal Year Annual Research Report
児童虐待の脳発逹におよぽす影響と敏感期に関する研究
Project/Area Number |
19591210
|
Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
友田 明美 Kumamoto University, 大学院・医学薬学研究部, 准教授 (80244135)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三池 輝久 熊本大学, 大学院・医学薬学研究部, 教授 (90040617)
高野 美雪 熊本大学, 医学部附属病院, 臨床心理士 (40433031)
上土井 貴子 熊本大学, 医学部附属病院, 助手 (90363522)
川谷 淳子 熊本大学, 医学部附属病院, 医員 (30423669)
白石 晴士 熊本大学, 医学部附属病院, 医員 (60448529)
|
Keywords | 社会医学 / 脳・神経 / 臨床 / ストレス / 児童虐待 / PTSD |
Research Abstract |
小児期に過度の体罰を受けると、行為障害や抑うつといった精神症状を引き起こすことがこれまで報告されている。しかしながら、過度の体罰の脳への影響はこれまで解明されておらず、また、体罰を受けた人の脳の形態画像解析もこれまで報告されていない。我々は、小児期に受ける体罰が発達していく脳にどのような影響を及ぼすのかを検討するため、米国ハーバード大学精神科との共同研究で得られた被験者を対象に高解像度MRIの形態画像解析を行った。 方法は、小児期に過度な体罰を受けたことがある者23名(18-25歳、男15、女8)と、利き手、年齢、両親の学歴、生活環境要因をマッチさせた体罰・虐待歴や精神科疾患を有しない健常者22名(男6、女16)を対象とした。全ての被験者は広告を通して集められ、いかなる投薬治療も受けていなかった。形態画像解析(Voxel-Based Morphometry)には3テスラで得られた高解像度T1強調像を用いた。 結果は、健常対照群に比べて、右の中前頭皮質(10野)の容積が体罰経験群では顕著に減少していた(P=0.037,Corrected cluster level,-19.1%)。また体罰経験群では、左の中前頭回(9野:前頭前野背外側部)の容積も減少しいていた。症状質問表(Symptom Questionnaire)の"満足度"を測る尺度のスコアと右上側頭回、左下頭頂小葉、右紡錘状回、左の中前頭回の容積は被験者全体で正の相関があった。特に、左下頭頂小葉(40野)の容積と"満足度"を測る尺度のスコアの間には著明な正の関連を認めた(r=0.69、P=0.001)。小児期に過度な体罰を受けた影響は後の精神的トラブルを引き起こすことがわかっている。今回の検討で、顔の認知や感情を誘発する言葉の思い出しをつかさどる部分の脳の発達を妨げてしまうことがわかった。体罰という子ども時代のトラウマが情動系を司る前頭前野の一部の発達に影響を及ぼしていることが示唆され、"こころ"に負った傷は容易には癒やされないと予想された。過度の体罰を含めた児童虐待を未然に防止する、より一層の重要性を強調したい。今後は国内の被虐待児で同様の解析を検証していきたい。
|
Research Products
(9 results)