2008 Fiscal Year Annual Research Report
自殺における細胞内情報伝達の変化に関する分子遺伝学的研究
Project/Area Number |
19591354
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
西口 直希 Kobe University, 医学研究科, 医学研究員 (10362774)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福武 将映 神戸大学, 医学研究科, 助教 (80457085)
上野 易弘 神戸大学, 医学研究科, 教授 (30184956)
前田 潔 神戸大学, 医学研究科, 教授 (80116251)
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Keywords | 自殺 / 細胞内情報伝達 / 遺伝子多型 / RGS2 / ADRA2A / 不安 / Kruppel-like factor5 |
Research Abstract |
昨年度に引き続き、細胞内情報伝達の変化を切り口とし、自殺の生物学的基盤に関与する遺伝子の同定を試みた。細胞内情報伝達の主要なセカンドメッセンジャーの一つであるG蛋白質を制御するRegulator of G protein signaling(RGS)についてそのサブタイプであるRGS2と自殺者との相関、さらには自殺者死後脳の扁桃体、前頭前野での変化を報告し、Neuropsychopharmacology誌において発表された。RGS2については、他の研究者より、人の不安障害や、動物での不安行動との関連が報告され、不安や情動制御の失調が自殺の生物学的基盤における指標となる可能性が考えられる。そこで、情動制御に重要なはたらきを持つ、視床下部一下垂体一副腎皮質(HPA)系に着目し、HPA系に関わる遺伝子と自殺との相関を調べた。そうした候補のなかで、アドレナリン受容体2A(ADRA2A)遺伝子のプロモータ領域に存在するC-1291G多型が、男性自殺者との相関は見られないものの、女性では有意に相関していることを見いだした。自殺の背景には性差が見られるが、今回の結果がその生物学的基盤の解明に寄与するかもしれない。その他、Neuronal nitric oxide synthase1および3遺伝子と自殺との相関研究等を行った。 一方、死後脳を対象にマイクロアレイ法により発現変化が認められる遺伝子スクリーニングも行った。そのなかで、グルタミン酸情報伝達に関わるKruppel-like factor5が自殺の原因疾患として重要な統合失調症と関連があることを見出し、死後脳海馬における発現に変化が見られることを確認した。関連遺伝子の同定において、マイクロアレイ法が有用であり、今後、こうしたアプローチを進めてゆく必要があると考えられる。
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