Research Abstract |
本研究の目的は,ラット肺移植モデルにおいて,同系ラットの骨髄から採取した血管内皮前駆細胞をレシピエントラットに静脈内投与(細胞移植)することで,肺血管内皮細胞の再生が促進され得るか,さらにこれが移植肺虚血・再灌流傷害の程度を軽減することができるかどうかを明らかにすることである.さらに,炎症抑制性サイトカインIL-10を血管内皮前駆細胞に遺伝子導入した後に細胞移植を行うことで,肺血管局所における炎症抑制が得られる否か,また,これが虚血・再灌流傷害の予防と治療の上で,細胞移植単独の場合と比べてさらなる上乗せ効果を期待できるか否かについて検討することである. 平成21年度は,まず肺組織からの幹細胞の分離を試み,それに成功した.この際に肺組織を保存するのに用いる肺保存液の組成によって,分離される幹細胞の数に違いがあることを発見し,成果を2009年5月のAmerican Thoracic Societyで発表した.一方,SDラットをドナー,GFPtgSDラットをレシピエントとする左肺同所性移植を行い,移植肺にGFP(+),抗CD31抗体(+)の細胞,つまりレシピエント由来の肺血管内皮細胞が存在することを発見した.同じ目的で,雌性Lewラットをドナー,雄性Lewラットをレシピエントとする同系肺移植を行い,移植肺内に抗CD31抗体(+),Y染色体(+)の細胞がみられるか否かについて検討を試みたが,FISHの手技を確立するに至らなかった,今後は,GFPtgSDラットを用いたモデルで,レシピエント骨髄の移植によりレシピエント由来の肺血管内皮細胞の増加がみられるか否かにつき研究を継続していく予定である.
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