Research Abstract |
前年度に引き続き,病床数500以上の基幹病院と考えられる麻酔科認定病院を対象として,2007年の1年間に手術室で実施した異型適合血輸血に関して,アンケートによる実態調査を行った.384施設中207施設から回答があり,異型適合赤血球輸血は21施設(10.1%)から26症例が報告された.前年度と併せた49症例において,異型適合赤血球輸血に起因する溶血反応は報告されなかった. 手術室で5,000ml以上出血し,ヘモグロビン濃度が5g/dl未満となった場合,あるいは心臓マッサージが施行された場合には各々51%,67%が予後不良であったが,このような症例への未交差同型血輸血,異型適合赤血球輸血の実施率は各々17〜19%,5〜9%に止まり,前年度調査の結果から改善は認められなかった.また,2年間で集積された異型適合赤血球輸血症例中18症例はAB型であったが,輸血された異型適合血は全てO型製剤であり,本来O型製剤よりも優先すべきA型ないしB型製剤は1単位も輸血されていなかった 全ての製剤に関する異型血輸血は25施設から44症例が報告された.前年度と併せた149症例中,緊急輸血に起因すると考えられる溶血反応は1症例で認められた,本症例はA型であり,未交差同型血輸血とAB型血小板25単位の輸血が行われていた.後遺症は認められなかった.交差的合試験を省略したための,不規則抗体による溶血と推測された. 緊急輸血にともなう溶血反応の発生率を把握するためには,異型(適合)血輸血とともに,未交差同型血輸血症例に関する情報収集も必要と考えられた. 手術に関連した出血死を削減するための当面の対策として,緊急輸血の普及は有効と考えられ.その普及を妨げている安全性に対する不安を解消するためには,溶血性副作用に関する実態調査の継続が必要と考えられた.同時に,緊急輸血法に関する啓発も不可欠と考えられた.
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